表彰式《撮影 益田和久》

世界耐久選手権第7戦は、トヨタ『TS030ハイブリッド』が地元・日本、それも富士スピードウェイでポール・トゥ・ウィンを飾った。

レースにタラレバは禁物だが、もし、アウディ『R18 e-tronクワトロ』1号車の周回遅れへの「激突」とそれに伴うペナルティがなかったら…? 恐らくアウディが勝利していただろう。あのトレルイエの一瞬の判断ミスが明暗を分けた。

しかし、レースというのはそういうものだ。

膨大な費用をかけ、最先端のテクノロジーを注いだマシンを最後は生身の人間に託す。それこそが自動車レースの醍醐味というものだろう。

トヨタ・レーシングはドライバーにもクルーにも「地元戦」という高いモチベーションがあった。それこそが一番の勝因だったかも知れない。トヨタ側も小さなミスはあったが、戦況を大きく左右するほどのミスを犯したのは王者アウディの方だった。

毎スティント、タイヤ交換を必要としながらも燃費の良いアウディに対し、トヨタは2スティント毎にタイヤを換える戦法で対抗した。最終的にアウディよりも1回ピット・ストップが多くなるのは覚悟の上だった。ラップタイムではTS030がアウディを上回っており、そこに勝機を見いだしていたからだ。

しかしレース中盤、トヨタはピット作業の遅れや周回遅れにつかまるなどしてアウディとの差を思うように広げることができず、苦戦を強いられる。しかし苦しい状況はアウディも同じだった。トヨタに遅れまいとする焦りが、バックマーカーへの無理な追い越しと、アクシデントにつながった。

アウディ1号車はカウル交換を強いられたものの、ラップタイムに大きな影響を及ぼすほどのダメージではなく、すぐにレースに復帰。しかしそれよりも大きかったのはピットでのストップ&ゴーのペナルティだ。ここでトヨタの先行を許し、アウディの目算は外れることになる。

しかし、それでもアウディは勝利をあきらめない。最後のスティントにこのレースで唯一、タイヤ交換なしでピットを出て優勝への執念を見せる。残り20分を切り、トヨタが給油のみのスプラッシュ&ゴーでコースに戻った時、アウディはわずか5秒の背後にまで迫っていた。

アクシデントが導いたとはいえ、まったく違う戦法を取る2チームが最後に交錯するのだからレースは面白い。だが、そこからの中嶋一貴の鬼気迫る走りは素晴らしかった。最後までプッシュし続け、リードを広げての優勝だった。

初めてのスポーツカー・レースとなった佐藤琢磨は、残念ながら23周遅れの総合17位に終わった。

LMP2クラスに出場したふたりの日本人ドライバーは健闘した。井原慶子は中嶋から19周遅れながら総合13位、クラス6位でフィニッシュ。中野信治に至っては220周を走りきり総合8位を獲得、みごとクラス優勝に輝いた。

GTEプロ・クラスはチーム・フェルバーマイヤー・プロトンのポルシェ911RSR(997)が、GTEアマ・クラスはラルブル・コンペティションのコルベット C6-ZR1がそれぞれクラス優勝した。

喜ぶトヨタレーシングのクルー《撮影 益田和久》 トヨタ TS030ハイブリッド《撮影 益田和久》 中嶋一貴(トヨタ)《撮影 重信直希》 喜ぶトヨタレーシングのクルー《撮影 益田和久》 アウディR18 e-tronクワトロ《撮影 益田和久》 【WEC 第7戦 富士】明暗のトヨタとアウディ、その分かれ道…レースを振り返る 《撮影 益田和久》 【WEC 第7戦 富士】明暗のトヨタとアウディ、その分かれ道…レースを振り返る 《撮影 益田和久》 【WEC 第7戦 富士】明暗のトヨタとアウディ、その分かれ道…レースを振り返る 《撮影 益田和久》 スタート《撮影 益田和久》 接触事故により、左のフロントカウルが損傷したアウディ R18 e-tronクワトロ《撮影 益田和久》 スタート《撮影 益田和久》