VWジャパン・庄司茂社長≪撮影 小松哲也≫

フォルクスワーゲン グループ ジャパンの庄司茂社長は9月18日、8月の社長就任後初めて報道各社とのインタビューに応じ、日本市場を右肩下がりと思っていないとした上で、輸入車に対するバリアを下げれば成長の余地はあるとの考えを示した。


◆輸入車に対する"バリア"を下げることが一番の課題
‐‐‐‐:現在の日本市場をどのようにみていますか。

庄司社長(以下:庄司):実は、私は日本で自動車の販売をするのは初めてです。自動車の卸売に関しては過去27年間、他の会社(伊藤忠商事)で携わってきましたが、日本市場を扱うのは初めてです。売り方など色々(他国と)違う面がたくさんありますが、何より一番強く感じるのは輸入車に対するえも言われぬ抵抗感、バリアが相変わらず強いということです。

私が自力で初めて買った車は『ゴルフII』でしたが、その際も周りから『えっ輸入車買ったの?』と言われました。輸入車に対するそうした見方が未だに強くあるというのは正直思いますね。また我々の方にも、売り方やお客様への接し方などに、輸入車を扱っているという思いが少し残っているのではないかという気はしています。ですから、販売側と消費者側の両面から"輸入車"であるというバリアを下げることを一番の課題にし、自分に対してのスローガンにしていきたいと思っています。

‐‐‐‐:そのバリアは、どのようにして下げていこうと考えていますか。

庄司:VWというのは、ヨーロッパのブランドでヨーロッパの車です。ドイツの市場、ヨーロッパの市場をまず出発点として商品を開発している以上、日本市場から商品の選択をする余地というのはあまり無いと思います。もちろん、導入する車種のラインナップや設定というのは我々が考えていきますが、まず大きく手が入れられるところは商品の売り方と表現の仕方、コミュニケーションの仕方だと思います。そういう意味で、マーケティングにその余地があるのではないかと思っています。

‐‐‐‐:バリアを下げることは、ブランドイメージまで下げてしまうことにはなりませんか。

庄司:『バリアを下げる=価格を下げる』と考えがちですが、我々はそれが議論の最初のポイントであるべきとは思っていません。我々の車の価格設定が高かったとしても、その結果として、リセールバリューが高く維持できるという部分もあります。また、VWだからこそ乗る価値があると思って頂いている方もたくさんいらっしゃいますので、そうした点にも配慮した上で価格設定をしていこうと考えています。

「バリアを下げる」というのはどちらかというと心理的な面です。経済的なバリアを下げるというよりは、もっと違うところで我々は取り組むべきものがある。例えば、コンビニのジュースは(他の量販店と比べて)決して安くはない。でも、コンビニが近くにあれば買ってしまいますよね。それもひとつのバリアの下げ方ですね。「お客様の近くに」という点は、我々の宿題として残っているのではないかと思います。


◆日本市場は右肩下がりではない
‐‐‐‐:日本市場は成熟化したといわれてからずいぶん経ちますが、成長の余地はあるとお考えですか。

庄司:我々は日本市場が右肩下がりだとは思っていません。バリアを下げることで我々にも十分チャンスはあると考えています。日本車はヨーロッパで12〜13%のシェアを占めています。それを考えると、今(輸入車シェアが)せいぜい7%という日本市場に、まだ余地はあります。確かに、市場全体では下がってはいますが、我々の売り方によってはまだまだ日本市場にチャンスはあると思います。

‐‐‐‐:VW本社は日本市場をどう位置付けていますか。

庄司:まず2018年にVWグループ全体で1000万台、VWブランドで660万台という目標があります。その中で日本は11万台を目指します。そして、11万台を達成する上での課題は車種の拡充です。VWはディーゼルエンジンが強いと自負しているので、積極的に導入していきたい。また、ディーゼルエンジン搭載車以外についても、できるだけ多くの車種を日本に今後も導入していくことで車種の拡充を図っていきます。

また販売面では、拠点数を333個にすることを目指して整備を進めています。拠点整備は、2018年よりももう少し早く終わるようにと考えています。それもすべて輸入車のバリアを下げるというキーワードの下に取り組んでいきます。

‐‐‐‐:ディーゼルエンジンは、いつごろまでにどの車種で投入しますか。

庄司:車種はまだ決めていません。具体的な時期も申し上げられない状況ではありますが、2年以内と一部で報じられましたが、それについては否定はしません。車種については、一番受け入れられやすいクラスで、みなさんの一番注目度が高いところから始めたいと思っています。

‐‐‐‐:国産車メーカーは市場の縮小に合わせて、すでに販売店の整理統合を進めていますが。

庄司:販売拠点の数は、マツダが約800、スバルが600弱、我々が246ですから、国内メーカーとは話にならないくらい拠点数に差があります。やはり最低限のところまで広げないとカバーできないというのが正直なところです。他社がやっているような手厚く、近いところでのサービスがまだまだできていない今の現状を、せめて最低のレベル、お客様に許容して頂けるレベルまで上げなくてはなりません。


◆激戦区へのup!投入
‐‐‐‐:エコカー補助金ですでに需要を先食いしてしまったのではないかと言われているタイミングでの『up!』の投入になりますが。

庄司:確かに楽なタイミングではありません。しかし、そこにあえてup!を持ってきたというのは、一番強豪ひしめき合う(セグメントの)中で真っ向勝負していって、我々も鍛えられていくべきだというのがひとつの理由です。もうひとつの理由は、お客様に最初に乗って頂く車、本来の意味でのエントリーモデルが欲しかったからです。

‐‐‐‐:up!の日本での販売目標台数は。

庄司:具体的な数字を出す自信がまだありません。もちろん大きな柱になって欲しいと思っていますが、やはり国産車との競合が激しいカテゴリーですから、実際に販売してみないとはっきりした数字は出せないと思っています。

2001年にデビューした同クラスの2ドアモデル『ルポ』は、年間5000〜6000台ほど売れました。up!については、その数字は上回るでしょうというぐらいは言えますが…。

‐‐‐‐:up!の競合車は。

庄司:ボディサイズがほぼ同等のトヨタ『パッソ』が考えられますが、パッソの購入を検討されている方がup!を同時に検討するかというと、正直なところピンとこないですね。パッソを買われる方は、up!とは違うところにバリューを見出していると思います。また、up!を検討するユーザーは、色々なセグメントからいらっしゃるのでないかと考えています。

おそらく、トヨタ『アクア』のユーザーもそうだと思います。up!も似たような理由で皆さん検討されるのではということから、あえて競合車を想定するというのは難しく、また、おそらくないのではないかとも思います。

‐‐‐‐:2018年に11万台の販売を目指す上でカギとなるのは何ですか

庄司:今我々が持っている大きな課題は、販売方法、コミュニケーションの仕方です。今回、up!のテレビCMに久保田利伸さん、Charaさん起用するのも、従来の欧州車とは違ったコミュニケーションの仕方を意識しています。

ラインナップに関しては、日本市場が大きく変わってきており、ダウンサイジング化が驚くべきスピードで進んでいることから、我々も本国とコミュニケーションを深めながらラインナップを整えていかなければならないと思っています。

ただし、VWで軽自動車を出すというわけにはいきませんので、up!『ポロ』『ゴルフ』の派生車種の範囲の中で、エンジンバリエーションを追加することなどによって商品に多様性を持たせることが重要になってくると思います。

VWジャパン・庄司茂社長≪撮影 小松哲也≫ VW up!発表会≪撮影 小松哲也≫ VW up!発表会≪撮影 小松哲也≫