CHAdeMO協議会事務局 丸田理氏《撮影 宮崎壮人》

電気自動車(EV)用のCHAdeMO急速充電器の国内設置台数が今年9月、1300基を超えた。CHAdeMO協議会の事務局メンバーの丸田理氏は、当初よりも速いペースで初期整備がほぼ完了し、次のフェーズに移っていくと語る。


----:CHAdeMO協議会の設立からおよそ2年半が経過しますが、これまでの主な活動の成果をお聞かせください。

丸田理氏(以下:丸田):CHAdeMO協議会の大きな設立の目的としては、CHAdeMO規格を世界中で使って頂くために提案していく、規格の国際標準化ということが活動の柱のひとつ。そしてEV普及のために、インフラを整備していこうというのが2つめの柱です。

まず規格に関しては、日本国内の自動車メーカーはほぼ皆さんCHAdeMOを採用して下さっているのですが、何しろドイツ、アメリカの自動車メーカーの圧力が非常に強くて、なかなか国際標準化という意味では思うように進んでいないというのが現状ですね。


----:もうひとつの柱であるインフラ整備ですが、9月7日時点でCHAdeMO対応の急速充電器設置台数が1617基、このうち国内は1318基となっていますね。

丸田:CHAdeMO協議会が発足した当初に想定したものよりも、むしろ速いペースで進んでいると思います。EVの普及とインフラは需要と供給の関係で、急速充電をしたい人がきちんとサービスを受けたい時に受けられるようになるには、だいたい100〜200台のEVに対して1基の急速充電器があれば確率論的に十分な数のインフラではないかと考えてます。

国内で今、約2万台のEVがすでに走っている。その台数だけでいえば200〜300基の急速充電器があれば足りる計算になるかもしれませんが、一方で初期インフラというのは数の問題ではなくて、一定距離走った地点のどこかに充電器がないと、ユーザーは困ることになってしまいます。

EVの走行距離が限界に行くまでの間に息継ぎできる場所が見つかるという、インフラの初期整備が、この段階でほぼできているということは、我々の目指すところとして非常に大きな成功だと思っています。またひとつの節目ではないかと思います。


----:初期整備がほぼ完了したとなると、次のフェーズに入っていくことになりますね

丸田:そうですね。ただ急速充電器の数自体は十分なんですが、国内の約1300基という中にはフリートユーザーが自社の事業用に所有していて、一般の人が気軽に使えないというものも一部入っています。それからセキュリティや営業時間の関係で夜間使えないというのもあります。

むしろそういうところの方が多く、24時間使える充電器の割合は、たぶん5分の1ないし4分の1程度になると思います。このため今後は設置数の問題ではなくて、使い勝手とか、サービス性の向上が課題になってくると思います。


----:海外では約300基のCHAdeMO対応の急速充電器が設置されていますが、どのような国や地域で導入されていますか

丸田:国によって濃淡はありますが、ほとんどはヨーロッパに集中しています。ヨーロッパで初期整備が一気に進んでいるのは、日産自動車が『リーフ』の現地生産を計画しており、その地元の政府が投資して整備していることが背景のひとつです。

それに加えてCO2問題や、環境車への対応という意味でもヨーロッパは非常に敏感なので、国単位でインフラの整備は進んできています。イギリスやオランダ、ノルウェーなどでは政府レベルで色々な導入支援やプロジェクトを行っており、それにつれて実際にEVが販売されるようになると、その周辺国でもどんどん導入が始まりつつあるというのが今のヨーロッパの状況だと思います。


----:ヨーロッパで導入が進んでいるというお話ですが、今後こうした地域で欧米メーカーが規格づくりを進めている「コンボ規格」対応のEVが走り出した場合、CHAdeMOの充電インフラはどうなりますか

丸田:コンボのEVが走り出したからといって、CHAdeMOのインフラを撤去しなさいということにはならないですね。すでにCHAdeMO対応のEVが走っているわけですから。


----:とはいえコンボ陣営も国際標準化を目指していますよね

丸田:国際標準という意味での正式な議論はIEC(国際電気標準会議)で今、行われています。来年の春から夏にかけて結論が出されるスケジュールになっていますが、その中にはCHAdeMOと、ドイツおよびアメリカが共同で提案しているコンボ、それから中国の提案がそれぞれ併記される見通しです。

IECがそれぞれの規格を併記して、併存させていきましょうという決定を下すことはルール上認められています。実際に各国のナショナルスタンダードがどうなるかというのは、そこから先は政治的な世界になりますね。


----:5月に開かれたCHAdeMO協議会の総会で志賀俊之会長は「チャデモやコンボはコネクター形状や充電制御方式など5%の部分しか異なっていない。共存したり、互換性を持たせたりすることは可能」と発言していますね

丸田:急速充電の仕方自体はコンボもCHAdeMOもDC(直流)で車に電力供給するという意味では似ています。また、充電器を設置する場所に電源を持ってくるインストレーションコストは非常に大きいんです。

コンボ対応車が走り出す2〜3年後までには、さらにもう一段階、CHAdeMOのインフラが進むと思いますが、その時にCHAdeMOが設置されているところのインフラ、電源を受け入れるための基盤は、コンボが自分の装置を置こうと思った時に、のどから手が出るくらい欲しい貴重なものだと思います。

当然のことながら規格を統一するのが利用者にとっても一番良いと思いますが、新しい通信技術を使いたいとか、充電するためのコネクターをひとつにまとめたいなどコンボ陣営が譲れないところがあるとすれば、そこのところは最低限違っていても、他の制御だとか、電源を造る部分を共通にすれば良いのではないか。

そこも無理だったとしたら、インフラの整備の中で一番苦労するインストレーションポイントを探すとか、1次側の電源供給までは共通にして充電スタンドの所にCHAdeMOとコンボ方式の充電器が並んでいても良いのではないかとか、とにかくEVの普及ということに関して色々と協力できる方策を探っていきましょう、というのが志賀会長のメッセージだと思います。


----:日本工業標準調査会が今年8月にCHAdeMO規格を標準仕様書(TS)として取りまとめることを承認しましたが、まだ日本の規格にはなっていなかったのですね。

丸田:その通りなんです。CHAdeMO対応のEVをヨーロッパやアメリカでも普及させたいということで、まずは規格の国際標準化を提案しています。JISのお墨付きを得てからIECの場に持っていっても良いのですが、CHAdeMOの提案が100%そのままIECの決定になるか未確定なところがありまして、IECの場で変更が生じた部分はフィードバックするという手続きが後から発生するということになるので、まずはIECの方をこれまで先行してやってきました。


----:国際標準化する上でJISを獲っておく必要はないということですか

丸田:はい。それはドイツ、アメリカも実は同じ状況で、これまではとにかくテクニカルな議論をIECの場でドイツ、アメリカも一所懸命やってきたんですね。そこでの議論を積み重ねてきた過程で、両論併記という形で落ち着きそうだということになった時に、ヨーロッパの方が先に欧州規格や、ドイツのJISにあたる規格を取得したのです。

そうした看板を背負って中国や南米など第3マーケットで、彼らは国家規格ですとコンボのロビーイングや説明を始めたので、これは負けられないということでJIS取得に乗り出したわけです。順調にいけば9月中にもチャデモ規格のTSが発効される見通しです。


丸田氏は、10月30日、31日に開催されるEVバッテリーに関するカンファレンスイベント『PHEV/EV Infrastructure and Business Japan 2012』に登壇予定。DC充電標準化に対するCHAdeMOの戦略と今後の展開について講演する。

■PHEV/EV Infrastructure and Business Japan 2012
会場:ヒルトン東京(新宿)
日程:10月30日〜31日
http://www.evupdate.com/electricvehiclejapan/jp-index.php

CHAdeMO仕様の急速充電器用EV充電コネクタ 日産・リーフの充電ポート (参考画像) 欧米の自動車メーカー8社が共同開発したEVやPHV用の統一規格、コンボ式急速コネクタ 三菱i-MiEV、トヨタプリウスPHV、日産リーフ