クラリオン マーケティング戦略本部商品企画部システム企画グループ 岡田元己氏《撮影 雪岡直樹》

AVライトナビというこれまでにないジャンルを確立した『NX501』に続いて『NX502』がクラリオンのカーナビラインアップに名を連ねた。

NX501は海外に展開しているハードウェアをベースに、キャンバスマップルのナビアプリ「マップルナビ」を採用。NX501を廉価なカーナビとしてではなく、コンテンツの魅力を生かしたナビゲーションとしてマーケティングをおこなっている。商品の魅力を性能や機能でなくコンテンツをメインとすることで、新たなカーナビの世界を切り開いていこうという狙いが垣間見える。

今回、クラリオンのマーケティング戦略本部商品企画部システム企画グループマネージャーの岡田元己氏と同システム企画G主任の原聡氏、キャンバスマップルの代表取締役社長山本幸裕氏の3名にインタビュー。NX501でマップルナビを採用した経緯から、新モデルNX502に採用された「マップルナビ4」で目指した「パーソナライズされたタイムリーなおでかけ情報ナビ」としての方向性、さらには世界的な視野で見たナビゲーションビジネスの将来について、話を聞いた。


◆震災で止まったナビの部品供給、そこで下した決断

----:まずはNX501導入の経緯を伺いたいのですが、据置型のAVナビゲーション(AVN)にマップルナビを入れようと提案されたのはどちらだったのでしょうか。

山本:岡田さんのほうからですね。我々は以前からクラリオンさんにいろんな提案をしていたのですが、そのときはAVNに入れようとは考えておらず、一緒に“PNDに挑戦しましょうよ”という話をしていました。

岡田:それが2011年の震災発生後、ナビ用マイコンが出荷が止まってしまったことで夏商戦に出す商品を出せるメドがなくなってしまい、たいへん困っていたんです。そこで、海外向けのWindows CEベースのAVNを日本に導入する話が持ち上がりました。しかし、この日本市場で車速パルスも取らない商品をAVNとして販売していいものかという躊躇がありました。

----:海外モデルなので価格的には商品力はあったのですね。

岡田:そうですね。競争力はあることは分かっていましたし、社内的にはそこに踏み切るのは営業的な判断も必要でしたが、緊急事態と言うことで「とにかくスピード優先でチャレンジしてみよう」という結論に至りました。そこで、Windows CEベースで開発しているアプリベンダーということで、ちょうど良いタイミングで山本さんから連絡があったのです。

山本:その話をいただいた数日後のゴールデンウィーク明けにはサンプルのハードが送られてきて、当社の技術陣が徹夜で仕上げました。動くものを岡田さんに見せたら、“これでいけるんじゃない”と言っていただけました。

岡田:私としては、”一週間もすれば載るだろう”と思っていたんですけれど、実装に当たってはシステム企画担当の原がかなり苦労したようです。また日本で売るための付加装備として、ワンセグチューナーを外付けしました。

原:当社のトンネル内におけるGPSの補完や地図描画のフレームレートを上げること、AV画面にナビ画面が割り込むといったところは、当社としてやりたかったところなのですが、NX501では開発期間の制約もあり、次期モデルの課題としました。今回のNX502に関しては、ハードウェアこそほぼ同じですが、これらの点をすべて改善しています。


◆実用性とコスト重視のユーザーに

----:発売されたNX501は、本体で6万円前後というAVNとしては強烈なプライスでしたね。海外での販売価格はいくらぐらいなのでしょうか?

原:北米では実売で800ドルですから、だいたい日本と同じくらいの価格となっています。

----:日本のユーザーはAVNというと20万円くらいを想像している人もまだ多いと思います。それは、これまで日本のナビメーカーがこの価格帯の市場を作ってきたわけですが、その市場も限界を迎えつつあるということでしょうか。

岡田:世界モデルの価格が適正じゃないかという気もしますし、日本市場においてはいろんなことをやって高くなっている部分があると思います。やはり車載スペックを満たした上にさまざまな付加機能を積み上げていくと20万円くらいの価格になってしまいます。NX501のようにナビあるいはオーディオとして必要十分な機能だけを揃えれば6万円台で販売してもビジネス的には成立します。

----:PNDやスマホアプリの影響で、ユーザーの側は低価格志向が強まっているのでしょうか。

岡田:それはあります。ハイエンドじゃなくても実用的であればいいという層も確実に増えていますよ。当社としても、NX501やNX502で価格破壊をしようというものではなくて、高機能を求めないユーザーのニーズを満たしたナビを適正価格で提供しようとしたらこの価格帯になったということです。


◆ライトナビの市場があることは予感していた

----:一方で、マップルナビのガイドブックコンテンツは他社のナビにはないキャラクターですね。

岡田:ガイドブックや地図の「マップル」ブランドはお客様の認知度が高く、マップルナビの多彩な検索機能やガイドブックは訴求しやすいポイントです。

山本:我々としても、以前からガイドブック情報はクラリオンさんの既存のナビに採用いただいてましたので、エンターテイメント色の強いクラリオンさんとマップルナビとの親和性は高かったと思います。

----:NX501はライトナビのジャンルを切り開きましが、販売の実績としてはいかがでしたか。

原:具体的な販売数は申し上げられませんが、当社で設定した販売目標の2倍を売り上げることができました。最近の市販商品としてはかなりの成績だったのは確かです。

----:それで、代打モデルであったNX501が、次のNX502ではレギュラー入りしたというわけですね。

岡田:緊急事態で導入した商品ではありましたが、NX501の商品コンセプトとしてこのジャンルはひとつのカテゴリーとして定着するだろうという読みはありました。市販に関しては、高機能ナビのラインナップに加えてライトなゾーンでの展開を探していたのです。ただし、ライトなゾーンまで全部自社で作るといったことにはコスト的な限界があって、コラボレーションできるパートナーが必要でした。


◆OEMを見据えて

----:NX501/NX502クラスのライトナビを今後、自動車メーカーに純正オプションとして展開する可能性も意識しているのでしょうか。

岡田:このパターンが定着してライトナビというジャンルが出来上がれば、次の段階としてOEMもうまくいくだろうと思っています。マップルナビのようにコンテンツ視点からナビを見ることができれば、いままでにないナビの魅力がでますよと、我々もカーメーカーさんに訴求している段階です。

山本:単純にガイドブックのデータを提供するということでなく、アプリケーションから提供することで、地図やユーザーインターフェースの面で世界観をつくりやすく、ガイドブックの楽しさをナビ上で表現できると考えています。

キャンバスマップル 代表取締役社長 山本幸裕氏《撮影 雪岡直樹》 クラリオン マーケティング戦略本部商品企画部システム企画グループ 原聡氏《撮影 雪岡直樹》 クラリオン NX502 クラリオン『NX502』《撮影 石田真一》 地図や検索用データベースには昭文社の『マップルナビ4』を採用。《撮影 石田真一》 左から原氏、岡田氏、山本氏 クラリオン岡田氏とキャンバスマップル山本氏 キャンバスマップル 代表取締役社長 山本幸裕氏 マップルナビ4 エリアごとにおでかけ相手に合わせたおすすめのスポットがわかる マップルナビ4 エリアごとに今の時期ならではのスポットを紹介 他のナビを圧倒するほどに充実しているのがガイドブック機能。《撮影 石田真一》 ガイドブックデータは約8万件。旅行ガイド「まっぷるマガジン」、「ベストドライブ」掲載の情報がほぼそのまま収録されている。《撮影 石田真一》 任意のエリアを事前に調べられることはもちろん、今いる地点の情報も参照できる。《撮影 石田真一》 『マップルナビ4』で新たに加わったのが「誰と行く? 検索」だ。《撮影 石田真一》 ドライブの相手が「誰なのか」を選ぶだけで、その相手にマッチした目的地を選んで表示してくれる機能。《撮影 石田真一》 「今の旬! 検索」では、まさに今が旬の場所を探すことができる。《撮影 石田真一》 例えば花の名所など。旬の名物(たべもの)を探す際にも便利。《撮影 石田真一》