三菱自動車 パイクスピーク参戦チーム…増岡浩監督兼ドライバー・百瀬信夫EV要素研究部長

ミツビシがモータースポーツのフィールドに帰ってくる。2009年の参戦を最後に封印していたワークス体制によるモータースポーツ活動を再始動。新たな挑戦意義を携えて頂きを目指すというのだ。

ゴールはアメリカ・コロラド州のパイクスピークスの頂上。スタート地点からゴールまでの標高差は約1500m、150以上のコーナーが待ち構える平均勾配約7%のヒルクライムセクションを、ミツビシが世界に誇る電気自動車の技術で一気に駆け上がろうというチャレンジである。

約2年半の休眠を経て始動したミツビシの新たな挑戦。このプロジェクトの中心に居る増岡浩氏(チーム監督兼ドライバー)と、『i-MiEV Evolution(アイ・ミーブ エボリューション)』の車両開発に携わった百瀬信夫氏(開発本部・EV要素研究部長)に参戦への意気込みを聞いた。

---:まずは増岡さんに今回の参戦に至る経緯を伺います。何時、どのような経緯で決まったのですか。

増岡:今回のチャレンジは我々のワークス活動としては2009年のダカール・ラリー以来の参戦になります。計画そのものは2年くらい前からあったのですが、リーマンショックのような難しい時期があったり、2011年は東日本大震災の影響があったりで…。ただ、準備だけはしておこうと、いろいろ動いていました。そして、今年やっとという感じですかね。

---:パイクスピークがターゲットになった理由をお聞かせ下さい。

増岡:パイクスピークは条件的にも高地で過酷ですし、電気自動車のPRには最適だと感じました。競技も非常に単純明快で、頂上の4300mまで山道を一気に駆け上がるタイムレースですから一般の方にも結果が分かりやすいと思います。

---:では、車両開発の側面から百瀬さんに伺います。お話できる範囲で良いのでどのような準備をされていたのか教えてください。

百瀬:何度も揺り戻しはあったのですが、最終的に我々が持っている電気自動車の、それも量産車ベースの技術で勝負してみようとなりました。開発の舞台裏を少しだけお話すると、数名の有志が集まったのが最初です。そして、コツコツと何かを積み上げていくといろんな理由で積み木が崩れ、再び別の積み木を積んでいたら『是非やるべきだ』という声が社内から出てきまして、今度は『一気に積み上げてくれ!』という話になりました(笑)。

---:増岡さんも嬉しかったのではないですか。

増岡:嬉しいというか、まあ、白羽の矢が立ちまして…。でも、将来的には若い者を育てなければなりませんし、そんなに『俺が、俺が』というわけではありませんよ。ただ今はテストや評価をしっかりやらないといけない時期なので、1年目は私がやることにしました。

百瀬:私たちは『i-MiEV』の量産技術を持っています。つまりEVを世の中に出した経験とか開発の中でいろいろと得たノウハウがあるわけです。それをベースに作れるのだから、良いレベルのクルマはすぐに出来ると考えました。そうした背景から、2年目の目標を今年に前倒ししようとなったわけです。今回の目標は、参戦1年目なのですが、「EVクラス優勝を狙うクルマ作りをしよう」というところに設定しています。2011年でしたら、量産型のi-MiEVに『コルト』バージョンRのアクスルをくっつけてマニュアルミッションの電気自動車でやるつもりでしたが…。

---:それにしても開発は短期間だったはずなのに、クルマをよくここまで仕上げましたね。

百瀬:正式なゴーサインは2011年末からお正月にかけてくらいでした。ただ、電池やモーターの挙動などは、全て量産開発の中でノウハウを持っていますから、何が起きるかということは大体理解は出来ていました。あとは電子ブロックを組み立てるみたいな感覚でサササッっと作り上げて、シェイクダウンも5月のゴールデンウィーク明け頃に済ませました。

増岡:社内のテストコースで基本的に国内で500kmくらい走りこんだのかな。実走テスト期間は1か月くらいでした。

---:電気自動車だと開発期間は短いものなのですか。

百瀬:今回のi-MiEV Evolution(アイ・ミーブ エボリューション)は、かなり電流量も大きいものですから、それを考えると一個一個の部品はしっかり設計していないとだめです。そこは量産設計をやる人間には自然と見えていました。同じ事をゼロからヨーイドンでやらされたら多分1年程度はかかると思います。ある開発メンバーが、『こんなに上手くいって良いのか』と今でもまだ怖がっていますよ。現地に行ってから何かあるのではないかと(笑)。

---:チームとしては何人ぐらいの編成なのですか。

百瀬:社内のエンジニアは7名程度ですね。あとはもはやパートナーに近い存在ですが、GSユアサ、明電舎からもエンジニアが帯同してくれます。

---:今回の挑戦は技術の側面から見たときに、むしろ量産車からレースカーにフィードバックされたということですね。

百瀬:そうですね。市販車からレースカーに持っていったものを増岡さんに走ってもらって、苛酷な条件で何が起こるのかということを検証するという形に近いですね。今回の検証結果は次の量産品に必ずフィードバックされますよ。

増岡:電気自動車って、乗ると本当に気持ち良いですよ。僕は今までうるさい車にばかり乗っていましたから、速くて静かなのが気持ち良い(笑)。ドライバーの目線で言えば、あのトルクを一度味わったらエンジン車には絶対に戻れませんよ。新しい乗り物だから、電気自動車を開発している僕たちだって楽しいですし。

百瀬:そう。今回、現場は上から言われてやるのではなくて、若いエンジニアが積極的に楽しみながら頑張ってくれました。

増岡:僕も今回の開発を通じて、三菱自動車の、若い世代のパワーを感じましたね。あとは僕がステアリングを握って、頑張って走ってくるだけです!

---:それではi-MiEVのリザルトを楽しみにしています。

増岡・百瀬:皆様のご期待にお応えできるよう、精一杯頑張ります。

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