テラモーターズ徳重徹社長は、「今の状況では満足せず、電動バイク市場で米テスラモーターズのポジションを3年に以内に獲るのが目標」と言い切る。《撮影 宮崎壮人》

電動バイクのベンチャー企業、テラモーターズが昨年国内で販売した電動バイクは約3000台、設立からわずか2年で国内最大手の座についた。しかし徳重徹社長は、今の状況では満足せず、電動バイク市場で米テスラモーターズのポジションを3年に以内に獲るのが目標と言い切る。


----:2010年設立のベンチャー企業が電動バイク市場でいきなりトップシェアを獲得しましたが、初めから勝算はあったのでしょうか

徳重徹社長(以下、徳重):今の状況で満足しているわけではまったくありません。やはり財務基盤をちゃんとするとか、(販売)台数をきちんと成長させていかなければいけないので、私の中ではまだまだ発展途上。今の結果を良いか悪いかというと、まずまずだなというのが正直なところです。

今の我々の製品は中国にもともとあったものを改良して販売しています。品質は相当変えてますが、見てくれはそっちのものなんですね。だからまだまだ本来のメーカーとしてのものづくりになってないわけです。

少なくともテスラモーターズのレベルはまずやりたい。そこまでできて、しかも海外で売れて初めて最初に目指していたベースの第一段階。ですので、今はまだそこまで行っていません。

とにかくテスラみたいなポジションをとっておけば、ブランドというかイメージは認知されますから、とにかく僕らが今狙っているのは3年以内にテスラのポジションを獲りにいくこと。グローバルな電動バイク、パーソナルモビリティの市場で、というのが目標なんです。そして今、かなり確信を持っているんです。それは始めた時よりも強く思っています。


----:テスラのようなポジションを獲るための具体的な方策は

徳重:私は、品質は3つの要素に起因すると分析しています。開発設計段階をきちんとやっているか、部品が良いか、そして組み付けの3つだと思っています。今は開発設計については一応指示はしていますが、もともとのベースを造っていない。部品は(より良いものに)変えました。組み付けは、横について指導は行っていますが自社ではない。だからある程度は改善してきていますが、まだ100%満足できるものではありません。

しかし、現在建設中のベトナム工場で生産するモデルは、一からの開発が可能となります。部品も、現地メーカーがホンダやヤマハ発動機などに納入しているショックアブソーバーやワイヤーハーネスやブレーキなどがあります。そこで耐久性が証明済みのものを、実際に現地の部品工場を回って確認していますので、部品についても問題ない。組み付けも当然、自社でやる。さらに社員教育もしっかりやれば、かなり向上するということですね。


----:現在は日本国内のみでの販売ですが、海外進出の青写真はどうなってますか

徳重:まず狙っているのはアジアの市場で中国以外の国々。中国はコンペティションがプライスオンリーみたいになっていますので、どうしてもそこは厳しい。我々が考えているのは東南アジアプラス台湾、その後がインドということですね。


----:アジアの電動バイクの市場性をどうみていますか

徳重:日本とは違う形で、盛り上がっていると見ています。ひとつは当然、環境問題。もうひとつ大きいのは石油の価格です。日本で1リットル140円くらいだとすると、ベトナムもフィリピンも120円くらいなんですよ。でも給料は日本の10分の1、20分の1以下で、石油だけ140対120で、とても高いわけです。ですので最終的には、ある程度リーズナブルな価格のEVで、ブランドを持った会社ができれば、かなり良いところまでいけると思っています。


----:日本ではバイク販売店のほか、家電量販店やホームセンター、通販サイトにも販路を広げていますが、海外での販売手法は

徳重:日本でやっているような様々な販路で、というやり方ではなく、現地に最適な方法にちゃんとフォーカスして、伝統的なやり方でできればと考えています。

例えば、ベトナムではかつて中国製の電動バイクが導入されて年間15万台売れた時があった。しかし、安いけれどもはっきり言ってノーメインテナンス、販売店もないし部品供給もないという状態だったので一気にしぼんでしまった。こうした背景から、我々はメインテナンスの部分を非常に重視しています。


----:7月に開催されるEV Battery Japan 2012で、『アジアで人気が高まる電動バイクのバッテリーニーズ』について講演されますが、どういった切り口になるのでしょうか

徳重:中国の事例や、東南アジア市場、インドについてもそうですが、自分で(現地に)行っていますので、肌感覚で実態のリアリティがわかっている。要は日本だと、とにかくハイテクとかリチウムイオン電池とか、航続距離がということになりますが、例えばフィリピンなどでは、別に鉛電池でも構わないというニーズもあるわけです。シリコン電池でも良い、安ければというのがひとつある。

つまりまずはそこからリプレイスを始めていくということです。台湾ではバッテリースワッピングという電池交換システムというのがもう始まっていて、日本よりも進んでいたりするんですね。

日本では、あまりに完璧主義で高いところから攻めるため、中途半端なものが許されない。ところが中国やフィリピンでは、普及させながらどんどん進化させてくという方法が通用する。我々ベンチャーもそうですが、いきなり100点満点の回答なんて出すことはできないわけです。シェアも獲りながら(商品の質を)良くしていくというやり方もありだと思うのです。


----:先日、国土交通省が1〜2人乗りの超小型車の認定制度を今年度中に新設すると発表しましたが、こうした分野への進出は考えていますか

徳重:我々もアジアの国も含めて、今の2輪車だけじゃなくて、パーソナルモビリティのようななものについては、バッテリーやモーター、コントロールユニットをもう少し考えても良いのではと思っています。

ただ、やはり我々も10万台規模の販売力まで行かないと基盤ができないわけです。基盤ができないと色々と何もできないので、パーソナルモビリティを造るのはまずは海外が先だと思っています。そこで改良も改善もして、それをフィードバックしたものを日本に持ってこられるのではないかと思っています。

いきなり最初から日本市場を狙うとハードルがとても高くなる。結局ベンチャーの世界は何でもそうですが、品質を上げるためには台数がいる、コストを下げようとすると台数がいるといったように、いわば「チキンアンドエッグ」なので、ある程度回していかないと、良いものも価格的にもこなれてきません。それをまず新興国でやればハードルが低くなる。そこで力をつけて日本でもやるというのはあるかもしれません。


----:徳重社長が描く次世代モビリティ社会についてお聞かせください

徳重:ひとつはやはり、当然クリーンでなければならない。そしてITと連携して渋滞が緩和されるような仕組みを作るとか、単に環境に良いだけではなく、スマートにITと連携されたものが広がっていけば良いのではと考えています。それがアジアから始まる、というところはあるのではないでしょうか。


----:アジアがそういう姿になるのはいつごろと考えていますか

徳重:はっきりとはわかりませんが、ただ日本と比べて良いのは、とにかくトライアンドエラー、やってみましょうという雰囲気がすごくある。そういう意味では、もしかしたら日本より早いかもしれませんね。


徳重社長は、7月3日、4日に開催されるEVバッテリーに関するカンファレンスイベント「EV Battery Japan 2012」に登壇予定。電動バイク・スクーターでの世界挑戦と、そこに必要なバッテリー戦略について講演する。

■EV Battery Japan 2012
会場:ヒルトン東京(新宿)
日程;7月3日(火)〜4日(水)
http://www.evupdate.com/ev-battery-japan/jp-index.php

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