広汽トヨタ 小椋邦彦総経理《撮影 土屋篤司》

主力車種の『カムリ』がモデルチェンジを迎えた広汽トヨタ(GTMC)。大多数が新規顧客である中国市場において、早くも将来の中古車発生、買い替えニーズなどを見据える。いよいよe-CRB(evolutionally Customer Relationship Building)導入の真価が問われ始めている。

震災やタイ洪水といった困難に直面したなかで、e-CRBはどのような効果を発揮してきたのか。GTMC小椋邦彦総経理に聞いた。

◆新型カムリ投入にあわせてアフター事業を本格化

---:広汽トヨタ第一店を見させていただきました。この2年ほど(前回取材は2009年)で機能が拡充していて、特に『カムリ』の買い替えを前に、アフター分野の管理も徹底しようという狙いを強く受けました。中国国内の保有台数が拡大する中で、保有車ビジネスの確保に先駆けた取り組みと見ました。自動車メーカーは、中国では新車をどんどん売りたいという状況ですが、GTMCでは将来の中国自動車市場への準備に取り組んでいます。そうさせている背景にはどのような考えがあるのでしょうか。

小椋総経理(以下敬称略):確かに中国では新車がたくさん売れていますが、買っていただいたお客様にいかに満足してもらうか、ということが大事です。買ったそのときだけではなくて、クルマを使っていただいて、広汽トヨタのファンになっていただきたいのです。買っていただくことも大事ですが、そのあとメンテナンス問題、交通事故後などには素早く直して差し上げる、買い替え時の中古車流通など、アフター分野にユーザーフォローのタイミングは無数にあります。自動車を通して長いスパンで満足をしていただくことが大事です。

小椋:章男社長も仰るように、「お客様から笑顔をいただくことが最高の報酬である」と。買ったときだけではなくて、点検でも、中古車を買っていただいたときでも、不満を言っていただいたときでも、気持ちよく解消するという、全体として笑顔になっていただくことが大事です。ディーラーでは、お客様がいるということが安定経営のベースになります。その基盤となる仕組みをGTMCが提供していきます。効率的にお客様の笑顔をいただくには、システムを採用することが近道ではないかということで取り組んでいます。

---:新車が売れている中国では、アフターを含めた取り組みは現段階では異端とも見えますが。

小椋:もし異端であれば、それこそ我々の強みになります。おそらくよその会社も取り組んでいると思います。トヨタブランドの会社で最も大事なのはお客様の満足です。これは国の枠を問いません。2010年の中国の中古車流通は約400万台です。新車は1800万台ですので、今後中古車市場が拡大することは明らかです。

小椋:GTMCチャネルも2011年で5年目を迎えて、クルマを買っていただいたお客様が買い替えのフェーズに入る時期です。お客様にとっては自分のクルマがいくらなんだ、というところが関心事ですので、価格の信頼性を担保することに注力しています。そこで中古車の評価を出来るだけシンプルに、5段階評価にしています。中古車業者とも評価の水準をシェアできるようにしています。情報共有により、中古車業者も、ディーラーも容易に中古車価格の提示が出来ます。中国では中古車評価の基準が正確に定まっていないものですから、その辺りを明確にすることでお客様に安心して買い替えを行なっていただくという狙いです。まずは正しい評価と正しい価格で中古車を流通させていく、ということです。

◆需給バランスの乱れにSLIM(Sales Logistics Integrated Management)が果たした役割

---:2011年は震災や洪水などで需要はあるけれど供給が追いつかない、という状態にありました。リーマンショックの当時は「需要変動」で、その変動に対してSLIMが適正な数値を割り出す、ということが行なえていたと思います。2011年の「供給変動」に対してSLIMはどのような効果をもたらしたのでしょうか。

小椋:SLIMは、お客様、販売店に対していかにリードタイムを短くして車両を提供するかということが狙いとしてあります。また、お客様の売れ筋データをベースにいろいろなアドバイスをさせていただき、トヨタの生産方式を販売店、物流に応用した仕組みです。震災などの影響は、お客様のニーズとは関係なく、生産に支障があるということですから、サプライヤーとのやりとりで影響がありました。システムを介して、販売店の在庫が薄い、ということは分かりますので、薄くなっているところから車両を補充していくことも対応できました。もう一つは中国での金融引き締め対策にSLIMが役立ちました。販売店ごとの資金のやりくりが見えますので、配車の調整、資金調達のサポートができるところはSLIMの効果といえますね。トラブルのありそうなお店とすぐに話しをする事は出来ます。

---:最新のSLIMはサービスの様子が見えるようになっています。ディーラーへの苦情などもメーカーで把握するということに対して、ディーラーの反応はいかがだったのでしょうか。

小椋:仕組みを入れたのがこの会社のスタートの時で、システムの効用を理解してもらいながら、またトヨタ特有のカイゼンを繰り返しながら、ディーラーにとってメリットのある仕組みに変えていきました。確かに販売現場に立つのは人間ですから、システムに縛られたくないという反応もあるかと思います。ですが、そうしたものを超えるメリットを、提供できていると考えています。故に、新車の物流、配車だけでなく、次のサービス、中古車、苦情処理などについてもシステムを拡充しつつあります。地道な活動がある程度実を結んでいると考えています。

◆SLIM、e-CRB、他国への横展開も視野

---:SLIM、e-CRBの今後ですが、他国への応用など、横展開はありますか。

小椋:我々の特色にすべき部分と、他の地域にも展開できることがあると思います。特に新規に立ち上げるところについては積極的に導入していっていいと思いますし、お客様のオーダーに対して柔軟に対応することは大切だと考えています。このあたりについては他の国でもトライしようとしていることがあると、聞いています。発展性はあります。仕組みが出来る土壌があれば展開できると思います。

---:新車販売について、SLIMを入れている場合と入れていない場合で、実績に差は出てきていますか。

小椋:我々の仕組みを導入しますと売れ筋が見えますので、長期在庫を抱えることは減ってきています。GTMCの新車購入者のデータを見ますと、クルマを初めて購入するお客様の割合は、車両ごとに差はありますが、2011年の平均で6〜7割です。お客様情報を積み上げて、もう一度お店に帰ってきてくれる来てくれるようになる仕組みというのは、今後武器になると思います。満足の輪が広がって、お客様が帰ってくると信じています。

◆ラインアップ拡充も検討

---:新型カムリに対する市場の反応はいかがですか。

小椋:評価はいただいています。ただ私たちは、いろいろなクルマを出していますので、中古車とも連動しながら、新しいカムリにも満足してもらう仕組みを作っていきます。

---:過去の日本では「いつかは『クラウン』」戦略でしたが、中国では現状、クラウンに相当するカムリが売れています。今後の商品ラインアップについては。

小椋:確かにカムリを買った方がこのあと何を買われるんだ、というのは大きな課題ではあります。これに対してはカムリの中でもグレードがありますし、日本から輸入しているクルマも販売していますので、そうした選択もあります。また中国は若者がこれからも多く出てきます。若い人でスモールクラスのクルマが欲しいという方々は増えてくると思うのです。こうした方々に向けたモデルも投入していきたい。まだ中国展開においては鍵となるクラスの車両をラインアップしているという状態ですが、その間を埋める車両をラインアップするということは必要です。今後ご期待いただければと考えています。

(インタビュアー:三浦和也、文責:土屋篤司)

広汽トヨタ社内に鎮座するSLIMモニター《撮影 土屋篤司》 広汽トヨタ社内に鎮座するSLIMモニター《撮影 土屋篤司》 広汽トヨタ社内に鎮座するSLIMモニター《撮影 土屋篤司》