広汽トヨタ社内に設置されているモニター《撮影 土屋篤司》

本誌では2007年、2009年とトヨタの中国・広州における次世代システムの取材を行なってきた。トヨタ生産方式を背景に、最先端のICT技術を用いて生み出された「次世代トヨタ方式」。カイゼンを積み重ねたシステムの活用で、いよいよ果実を手にするフェーズにさしかかっている。

広汽トヨタ(GTMC)が取り組む販売店との情報共有化。今回垣間見えたのは、GTMCの概念、取り組みをアフターサービスの分野にも拡げ、将来立ち上がるであろう中国の中古車市場に対して先手を打つという姿勢だ。この中古車ビジネスを含めた中国アフター分野にこそ、GTMCの狙う果実がある。

今回はまずGTMCの戦略の屋台骨となっているシステムのおさらいからはじめる。GTMCの社内に鎮座する巨大モニター上では一体何が確認できるのだろうか。広汽トヨタe-CRB推進部森光宏部長(取材時。現マリン&ユニット事業部舟艇販売室室長)に改めて伺った。

◆顧客情報管理の「e-CRB」、販売戦略管理の「SLIM」

GTMCでは、2004年の設立当初から製造販売一体一貫のジャストインタイム方式を構築するコンセプトで取り組みが始まった。

2006年の『カムリ』販売開始当時、106店舗で「e-CRB」(evolutionally Customer Relationship Building)が稼働。販売店の在庫やユーザーとのやりとりなど、現場のリアルタイム情報を収集することが可能になった。

顧客情報管理を担当するe-CRBとならび、2008年6月から導入、販売戦略管理を行なうシステムが「SLIM」(Sales Logistics Integrated Management)だ。

販売現場の情報を物流や製造側につなげ、販売店、ユーザーの視点でジャストインタイム方式を実現するというコンセプトで稼働している。

◆需要と供給をリンクさせる

活動のステップは大きく四段階あるという。

第一段階は、「作り」「運び」「売り」の全行程を見える化し、滞留車低減につなげる。第二段階では、販売店の店頭在庫の管理レベルを引きあげる。第三段階は、販売店のオーナーとGTMCのアロケーション(割当)を適正化すること、そしてこれらの段階を経た第四段階として「最終的には生産と市場の変動を適正化する」(森光氏)というのが狙いだ。

モニターにはカムリ、『ヤリス』、『ハイランダー』、『E'z』(イーズ)と車種が把握でき、販売計画、車種、生産ステータス、GTMCのヤード、輸送中のステータス、店頭在庫などが一覧として表示されている。

モニター縦軸には地域五都の全販売店が並ぶ。ひとつのチップが車両を表しており、グレーがカムリ、緑がヤリス、青がハイランダー、水色がイーズと色分けされている。

車両情報の詳細も表すことができ、30分ごとにアップデートが行なわれている。こうして中国全土のステータスがほぼリアルタイムで把握できるようになっている。

◆販売店の物流、資金状態を把握

可視化されている販売計画は、当月、車種別、進捗、受注まで幅広い。

モニターで赤く表示されている計画は異常。進捗が計画の半分以下で推移する店舗を示している。

販売店の資金状況も把握できる。店別の残高とGTMCの請求額が確認でき、請求額が残額より多いと、黄色、支払いが遅れると赤で表示される。

ディーラーが銀行へ融資申請を行なっている場合も表示される。銀行への申請から5日以上たっても融資が行なわれない場合は赤になるといった具合で、銀行と販売店の関係性、販売店に対する銀行からの評価も読み解くことができる。

◆販売店へのデリバリー管理

車両はラインオフの4日前に販売店に引き当てる。ラインオフの1.5日前に着工(ラインで流れること)し、ラインオフ後、ヤードに流れる。

販売店に車両を引き当てたタイミングで店舗に金額を請求、ラインオフのタイミングで入金を確認する。

入金が行なわれていないと背景が赤になり、出荷をストップする。キャッシュオンデリバリーを徹底している。

入金確認ができたら出荷待ちとなる。「購入者から入金され、出荷待ちの状態になって初めて販売車両として換算される」(森光氏)という。滞留している車両はカウントされない。

◆物流をリアルタイムで把握

出荷途上の表示では、青表示が海路、黒表示が陸路と色分けされている。海路は天津港と上海港を経由する。

それぞれ基準のリードタイムを設けており、2日以上基準をずれると背景が赤に変わる。輸送会社とコミュニケーションをとりながら情報を逐一更新している。

店頭在庫については、店に到着してから30日以上たてば黄色、60日以上たてば赤になる。基準在庫は0.7か月、在庫日数を21日程度と見ており、少なすぎると青、多すぎると赤になる。

◆見える化だけではカイゼンが進まない

「異常が見えるだけだと改善が進まない」(森光氏)ということで、毎週「SLIMミーティング」という役員会議をこのSLIMのモニターの前で行なっている。関係者20〜30人で行なう会議では、販売台数の進捗などを管理し、店頭在庫の詳細を確認する。

広汽トヨタ社内に設置されているモニター《撮影 土屋篤司》 広汽トヨタ社内に設置されているモニター《撮影 土屋篤司》 広汽トヨタ《撮影 土屋篤司》 SLIMモニター《撮影 土屋篤司》 SLIMモニター《撮影 土屋篤司》 SLIMモニター《撮影 土屋篤司》 SLIMモニター《撮影 土屋篤司》 SLIMモニター《撮影 土屋篤司》 広汽トヨタ社内に設置されているモニター《撮影 土屋篤司》 広汽トヨタ社内に設置されているモニター《撮影 土屋篤司》 広汽トヨタe-CRB推進部森光宏部長(2011年11月取材時。現マリン&ユニット事業部舟艇販売室室長)《撮影 土屋篤司》