福島第一原子力発電所1号機原子炉建屋カバー屋根パネル(2011年10月14日撮影)

京都大学の内田由紀子こころの未来研究センター准教授らのチームは、3月から4月にかけて、報道関係者115人に「震災報道」についてのアンケート調査を行った。

今回の調査に先立って、社会心理学の立場からの取り組みとして、震災直後の2011年3月から、半年後の9月までの、テレビや新聞の報道分析を行った。この結果、時期によって焦点化された事象が異なること、中立性やバランスの保持が重視されていたことなどが明らかになった。このため今回、報道の送り手の認識はどのようになっていたのか、また、どのような経験をされたのかを検証することとし、原発報道とそれ以外の被災地報道を比較した上で、報道関係者個々人のリスク・災害報道に対する考えを明らかにするため調査した。

2012年3月6日から4月13日にかけて調査を実施し115人の報道関係者からインターネットで回答を得た。原発事故報道およびそれ以外の震災報道の取材について、両方とも取材に行ったとする回答が62人、原発事故報道のみ取材に行ったとする回答が17人、原発事故以外の震災報道のみ取材に行ったとする回答が19人。取材地は福島県、東京都、宮城県、岩手県が多く、取材先は被災者や被災自治体、支援者、政府、東電、原発など。

調査結果では「報道内容がポジティブ・ネガティブどちらかにも偏らないようにしようとしていた」や「専門家や一般人の意見は一定の方向には偏らないようにしようとしていた」という項目に対しては、肯定的回答(かなりあてはまる・ややあてはまる)と答えた回答者が、一般災害報道では50%台だったが、原発事故報道では65〜75%にのぼった。

偏らない報道姿勢は回答者の過半数が意識していたが、特に原発事故報道ではその意識が高かった模様。一方で「悲惨さを訴えようとした」については、肯定的回答が、原発事故報道で65%だったのに対して一般災害報道では80%と多く見られた。報道が被災地・被災者への共感をもたらすことを意識していたと考えられる。

「政府や東電などの責任ある立場に対しては批判的視点から報道しようとした」では、原発事故報道の場合、75%を超える回答者が肯定的回答をした。

「できあがった報道が事実に忠実であったか」は、原発事故以外の一般震災報道では8割近くが「非常に」あるいは「かなり忠実」と回答していたのに対し、原発事故報道では、5割にとどまり、逆に「事実を描ききれないところがあった」という回答が35%にも達した。

災害報道全般としては、災害報道の視点として、回答者の70%が「災害報道では、被災者の視点に立つべきだ」と考えており、被災地や被災者の報道については70%の回答者が「災害報道では、悲惨さの中から立ち上がるという記事の構成の頻度が高い」と考えられていた。

災害報道と感情の関係については、約半数が「感情に訴えかけることは世論を動かす上で重要である」という見解には否定的だった。

また、取材中最も強く持たれた感情は「悲しみ」であり、次いで「憤り」、「苦しみ」、「怒り」が続いた。しかしその一方で「使命感」も強く感じられていた。

自由記述からは、反省ややるせなさ、無力感、逆に使命感なども記載されていた。自身も被災した記者や、強い恐怖に後々まで苛まれているという回答もあった。

東京電力福島第一原子力発電所。免震重要棟裏より2、3号機原子炉建屋を臨む(2012年1月10日)