ルノーは前部船倉に積まれていた。

100年前の1912年4月14日深夜、北大西洋で大型客船の「タイタニック」が氷山と衝突、翌日未明に沈没、乗客乗員約1500人が犠牲となった。この船に積まれていた唯一、1台の自動車がルノーだ。

ルノーが把握している資料によると、タイタニックがニューヨーク税関に提出するために用意した積み荷のリストに、自動車は1台だけが記載されている。1912年製、最新の「25CV」型だ。タウンカーないしクーペドゥビルといわれる車体を備えていたようだ。所有者はアメリカ人のウィリアム・アーネスト・カーター氏で、同じ船で帰国の途についていた。

当時のアメリカは、フォードが『T』型に大増産をかけているところで、自動車の大衆化に反発して、カーター氏は欧州車を北米大陸に持ち込むことにしたのかもしれない。氏は幸いにも悲劇から生還したが、ルノーは海の藻くずとなった。

キャメロン監督の映画で、ルノーが木製のパレットに載せられて船倉に収められるシーンがあるが、ルノーの資料によると木箱に入っていたらしい。このため、車両は未完成で、上陸後に組み立てられる予定だったとする資料もある。

1912年頃のルノー。写真はロシア貴族に納車されたもの。 映画『タイタニック』(1997年、監督:キャメロン)の1シーン