スズキ・アルトエコ(東京オートサロン12)《撮影 野口岳彦》

JC08モード走行時の燃費がリッター30.2kmと、非ハイブリッド車としては目下トップを走るスズキ『アルトエコ』。信号待ちなどのときにエンジンを止めて無駄な燃料消費を抑えるアイドルストップ機構を備えた、いわゆる“第3のエコカー”だ。オンロードでのエコ性能は高く、千葉・浦安市の市街地をエコランを意識して走行したところ、実燃費でもリッター26.7kmという結果が得られた。

このアルトエコ、スタイリングはノーマルの『アルト』とほとんど変わらない。バンパーやホイールキャップが新デザインとなり、テールランプもLED化されるなど、いくつかの識別ポイントはあるが、よほど詳しい人でもない限り、アルトと見分けるのは困難であろう。しかし、エンジンや車体各部については、その外観の変わらなさからは想像できないほどの大幅な改良が施されていた。

通常のアルトのJC08燃費はCVTモデルでリッター22.6km。そこから約30%も燃費性能を向上させるのは、アイドルストップ機構だけではとても足りない。

「エンジンや変速機などパワートレインの徹底改良、車体の軽量化や空力特性改善、ホイールベアリングの摩擦抵抗減、ブレーキの引きずり抵抗減、エコタイヤ採用、さらにクルマの省電力化など、燃費向上に寄与するあらゆる部分に手を入れました。内外装の変更は小規模ですが、中身は半分別物です」(アルトエコ開発に携わったスズキのエンジニア)。

エンジンは基本設計の古い「K6A」から新鋭の「R06A」に換装された。昨年1月にデビューした3代目『MRワゴン』に初搭載されたものと型式こそ同じだが、エネルギー効率向上のため、圧縮比を10.5:1から11:1に引き上げ、ピストンリングもF1マシンなどに使われている超低摩擦ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングとなるなど“大手術”が施されている。

「エンジンだけではありません。空力特性の向上のために車高を15mm下げているのですが、走りや乗り心地を損なわないようにするために、サスペンションもノーマルアルトとはほとんど別物になりました。開発陣の間では、フルモデルチェンジくらい工数がかかっちゃったね、などと言っていたくらいですが、その分、乗り心地や操縦安定性はとてもいいものに仕上がったと自負しています」(同)。

アルトエコの燃費性能の高さは、こういった努力の積み重ねで実現されたものだが、それらの設計変更の恩恵はエコ性能だけでなく、乗り心地や静粛性にも及んでいた。とくに乗り心地は優れており、一般道で路面の荒れた部分などを踏んでも突き上げ感が少なく、衝撃が丸められたようなフィーリングになっているのは好感の持てる部分だ。また、騒音面で不利と言われているエコタイヤを装着しながらロードノイズが低めなのも印象的。エネルギー損失低減は、クルマを上質にするというセオリーが体感されるところである。


井元康一郎

鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。

スズキ・アルトエコ(東京オートサロン12)《撮影 野口岳彦》 スズキ・アルトエコ(東京オートサロン12)《撮影 野口岳彦》 スズキ・アルトエコ(東京オートサロン12)《撮影 野口岳彦》 スズキ・アルトエコ(東京オートサロン12)《撮影 野口岳彦》 スズキ・アルトエコ(東京オートサロン12)《撮影 野口岳彦》