トヨタ アルファードHV《撮影 青山尚暉》

これまでスライドドアを備えたHVミニバンはエスティマの独占状態。先代にあった『アルファードHV』は現行型では存在しなかったからだ。

しかし『エスティマHV』の場合、ガソリン車同グレードとの価格差は136万円もあるのだから、相当に贅沢な買い物だった。

ところが2011年9月に加わった待望の『アルファードHV』『ヴェルファイアHV』は395万円からで、ガソリン車同グレードとの価格差は約55万円。まぁ、納得できる価格設定になったと言える。車両安定装置はガソリン車のS-VSCより高度な制御を持つVDIMとなり、装備類もより充実。実際の価格差はもっと小さい。

ガソリン車と異なるのは、1列目席間に巨大なセンターコンソールボックスが鎮座する点。実はそこにバッテリーが格納されるのだ。だから、ガソリン車と違い、サイドスルーは不可(エスティマも同様)。ボックスの容量も小さくなる。しかし、HVゆえに不都合になった部分はそこだけ。荷室を含め使い勝手はガソリン車とまったく同じである。

エスティマHV同様、駆動方式は電気式4WD(E-FOUR)のみで、HVシステムもまたエスティマ譲りのTHSII。つまり2.4リッターエンジン+2モーター(出力はエスティマと同じ)。10-15モード燃費は19.0km/リットルとクラス最上の数値を誇り(2.4リットルのガソリン4WD車は11.4km/リットル)、約70%もの燃費向上を果たしているわけだ。

実燃費は街乗りのみだと9km/リットル前後だが、高速中心になると15km/リットルも不可能じゃない。実燃費面でアルファード&ヴェルファイアの2.4リットルガソリン車はもちろん、最新のエルグランドの2.5リットルモデルを上回ることは確実だ。

そんな新型アルファード&ヴェルファイアHVの走りは、ズバリ、重い!思いのほか軽快爽快に走る2.4リットルガソリン車はもちろん、重厚感、高級感溢れる3.5リットルガソリン車とも違うドライブフィールの持ち主だ。

なにしろガソリン2.4リットルモデル比で約200kg、3.5リットルモデル比でも約100kgも重いのだから出足はかなり「よっこらしょ」とゆったり。アクセルレスポンスも穏やかすぎる設定だ。もちろん、速度に乗ればモーターアシストもあって、2.4リットルのガソリン車以上の加速力を発揮してくれるのだが、それでもECOモードだと“胸のすく加速力”など期待できない。そうしたキャラクターは「せっかくのHVなのだから、燃費を重視したエコ運転に徹して下さい」という開発陣からのメッセージのようにも思える。

このクラス、フラッグシップミニバン、豪華な後席を備えたミニバンゆえ、乗り心地に期待して当然だが、乗り心地は決して褒められたものではない。HVは転がり抵抗と乗り心地に振った16インチタイヤに限定されるのだが、それでも2列目席はつねにゴツゴツした振動が気になり、うねり路ではシートごと体がよじれるように感じられるし、段差越え時のショックはかなり大きい。

シート(とくに最上級のエグゼクティブパワーシート)は見た目重視でホールド感に乏しく、かなり落ち着かない掛け心地でもあるのだ。むしろ3列目席のほうが快適と言えるかも知れない(路面からのノイズは大きくなるが)。

理由はフラットフロアを重視するためボディ剛性を十分に取れず、大きく重く高いシートの剛性もまた低いから。乗り心地で選ぶなら、エルグランドである。

とはいえ、3分の2列目席の贅沢感、広さ、アレンジ性は文句なく素晴らしい。2列目席は2種類のキャプテンシートが用意されるが(8人乗りの2列目ベンチシート仕様の存在は忘れていい)、電動だったり、オットマンが付いていたり、膝回り空間が世界の乗用車最大の800mm前後あったりする。

とくに2列目席を最後端位置にセットし、フルリクライニングさせたときの4座独立の居住感は飛行機のビジネスクラスそのもの(天井の間接照明も雰囲気を盛り上げる)。乗り心地に目をつぶれば、東京〜京都間のドライブも新幹線のグリーン車並みに快適。愛犬連れならこれ以上の移動空間はないとも言える。愛犬の居場所は2列目席フロア、3列目席座面など自由自在だ。

ところで、燃費のいいHVだから、2.4リットルのガソリン車との差額をガソリン代で回収しよう、なんて考えても無理。実燃費計算で1年に1万km走るとしても、ガソリン代は年間僅か2万円程度の差でしかない。HVモデルはHVならではのEVモードを含む走行感覚やクラス最上の燃費・エコ性能&走行安全性能、エコドライブサポートシステムの先進感などに“投資する”ぐらいのつもりで乗るべきだろう。

ちなみに100V電源は先代アルファードHV、エスティマHVの1500Wではなくなった100W。ガソリン車でナビを注文したときと同じなのが残念だ。アウトドアなどで便利なだけでなく、災害時の電源車としても活躍できるから、早期に1500W化してほしい。技術的にはすぐにでも可能なのだから。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
乗り心地:★★
ペットフレンドリー度:★★★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフジャーナリスト
自動車雑誌編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に執筆。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組も手がける。

トヨタ アルファードHV《撮影 青山尚暉》 トヨタ アルファードHV《撮影 青山尚暉》 トヨタ アルファードHV《撮影 青山尚暉》 トヨタ アルファードHV《撮影 青山尚暉》 トヨタ アルファードHV《撮影 青山尚暉》 スライドドア開口部はステップ高390mm、フロア高480mm。開口部幅740mm、開口部高1310mm。《撮影 青山尚暉》 ガソリン車とインパネは共通だが、メーター、センターコンソールが異なる。《撮影 青山尚暉》 ガソリン車の回転計部分はハイブリッドシステムインジケーターに。《撮影 青山尚暉》 助手席にもオットマンを完備。《撮影 青山尚暉》 大型センターコンソールボックスの中にバッテリーが搭載される。《撮影 青山尚暉》 センターコンソールボックスはティッシュボックスがギリギリ入ね容量。RT《撮影 青山尚暉》 ナビ画面とエネルギーモニターを両立。《撮影 青山尚暉》 パノラミックビューモニター。《撮影 青山尚暉》 リラックスキャプテンシート。膝回り空間は最大800mm前後。《撮影 青山尚暉》 3列目席使用時の荷室奥行きは最小限。《撮影 青山尚暉》 AC100V電源の容量は先代アルファードHV、現行エスティマHVの1500Wではなく、100Wまで。《撮影 青山尚暉》 2列目席最後端位置なら大型犬が2列目席フロアに乗ってもこんなに広い!!《撮影 青山尚暉》