スズキ・アルトエコ《撮影 青山尚暉》

『アルトエコ』はズバリ、ダイハツ『ミライース』に対抗するスズキの切り札だ。

今、HV、EVに次ぐ第三のエコカーとして、燃費が驚くほどいいガソリン車に注目が集まっているが、ダイハツがミライースでJC08モード30.0km/リットルを達成した後、今度はスズキがJC08モード30.2km/リットルと刻んできた。まさに「2012年軽自動車燃費バトル勃発」である。

そんな『アルトエコ』の内外装デザイン、パッケージはアルトと同じ。しかしパワーパッケージは別物。アイドリングストップ付きの『MRワゴン』にも積まれるスズキ最新のNAエンジン(52ps、6.4kgm)と副変速機付きCVTを組み合わせる。

30.2km/リットル達成のためにはアルト同グレード比20kgの軽量化、15mmの車高ダウンと標準車とは微妙に違うエアロフロントバンパーの採用による空気抵抗の軽減、走行抵抗の低減、省電力化などさまざまな技術を投入した。もっとも大きな影響をもたらしたものが、アイドリングストップの採用と燃料タンクの容量を少なくしたこと。燃料タンクは標準車の30リットルから20リットルへ。ただしタンク自体は同じもので、ガソリンが20リットルしか入らないように工夫しただけだ。ガソリンの比重で計算するとマイナス10リットルだから約7.5kgもの軽量化ということになる。

価格はCVT同士の標準車の「G」と「ECO-S」で比較すると、新エンジン、新CVT、アイドリングストップ、JC08モード燃費22.6km/リットルから30.2km/リットルの燃費向上分で約4万円高ということになる。なかなかお安いじゃないか!

しかし、タイヤ空気圧を聞いてびっくり。ミライースは2.6kg/平方cmとパンパンで、乗り心地は想像通り褒められるものではなかった。が、アルトエコはさらにパンパンな2.8kg/平方cmだ!もちろん、転がり抵抗最優先の専用エコスペシャルタイヤ(ダンロップ『SP10』)である。

だから乗り心地に期待などできない……、と思ったら大間違いだった。

走り始めてまず感心させられたのが、何と乗り心地だったのだ。専用エコタイヤの剛性をあえて下げたり、手間をかけた足回りのチューニングによって、硬めとはいえ重厚かつフラットな乗り心地を実現! 開発スタッフによると非舗装路ではさすがに硬さが気になるとのことだけど、今回試乗した市街地ではたとえキツい段差越えでもショックの角が丸められ、まったく不快ではなかった。

エンジンもアクセル全開時を除けば実に質の高い、3気筒らしからぬ回り方をするし、巡航時の静粛性もなかなかだ。

ちなみに第三のエコカーの切り札と言えるアイドリングストップ機能は停止前の時速9km以下で作動。しかもOFFスイッチ付き。暖房、冷房を効かせたいときにはありがたい(アイドリングストップ状態だとエアコンは送風になる)。

誰もが気になるたった20リットルしかない燃料タンクの件だが、街乗りの実燃費は20〜23km/リットルだったから、400kmは走れる計算になる。それじゃ物足りないと思うか、十分と思うかは人それぞれ、使い方によるだろう。ボクなら普段、多くのガソリンを積まないことで得られる軽量化=燃費向上にちょっぴり惹かれる。

さて、軽セダンのアルトエコのペットフレンドリー度はどうだろう。荷室に中大型犬を自身で乗り降りさせる場合、開口フロア高は標準車より15mm低い630mm程度と低め。犬の乗降性としては合格ラインの高さだ。

フロアは後席使用時だと幅1000mm、奥行き480mmでしかないけれど、後席を一体で格納すると奥行きは1300mm近くまで拡大。大型犬2頭でも横になれるスペースが出現する(やや角度は付く)。ポイントは荷室開口部にほとんど段差がないこと。段差が大きいと乗り降りしにくくなるのである。

軽量化のためシートバックの構造を鉄板からワイヤーに変え軽量化を計った後席を格納している状態なら、愛犬をほぼ直角近く開くリヤドアから乗せることもできる。格納したフロアの地上高は665mm(中央部)と荷室側からより高めにはなるものの、大型犬、運動神経のいい中型犬ならピョンと飛び乗れる高さだ。

これで標準車にある後席5:5分割可倒機能があれば3人乗車+愛犬…という乗り方もできるんだけどね。とはいえ、15mmのローダウンで標準車より愛犬の乗降性が向上したことは間違いないですよ!


■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
ペットフレンドリー度:★★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフジャーナリスト
自動車雑誌編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に執筆。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組も手がける。

スズキ・アルトエコ《撮影 青山尚暉》 フロントバンパーはよく見るとサイドにエッジが入る空力対応の新デザイン。《撮影 青山尚暉》 スズキ・アルトエコ《撮影 青山尚暉》 スズキ・アルトエコ《撮影 青山尚暉》 MRワゴンから採用されたスズキ最新NAエンジン《撮影 青山尚暉》 アルト同様、パワステは軽自動車としては重目の設定。《撮影 青山尚暉》 インパネ回りのデザインは基本的にアルトと変わらない。《撮影 青山尚暉》 スズキ・アルトエコ《撮影 青山尚暉》 アイドリングストップのOFFスイッチ。《撮影 青山尚暉》 便利なトレイを完備。《撮影 青山尚暉》 ステアリング下のトレイ。《撮影 青山尚暉》 ヘッドレストが付かないのはアルトの同グレードと同じ。《撮影 青山尚暉》 後席の足元は比較的ゆったり。《撮影 青山尚暉》 前席カップホルダー&小物入れ。《撮影 青山尚暉》 市街地を30キロほど走った実燃費。アイドリングストップは10回程度。《撮影 青山尚暉》 荷室開口部の段差は最小限。幅1000mm、奥行き480mm。《撮影 青山尚暉》 タイヤは1種類。145/80R13サイズのダンロップSP10。アルコエコ専用。《撮影 青山尚暉》 スズキ・アルトエコ《撮影 青山尚暉》