VW パサート 新型

今回のCOTYの採点で、ボクが10点を投じたのは『リーフ』です。クルマそのもののインパクトと魅力だけでも「イヤーカーの価値」は十分だと考えますが、電気自動車に懸ける日産の本気の姿勢にも、大きく心を動かされました。

急速充電器の自社開発や、ITと連携させた独自の情報サービスの提供やデータ収集は、それを象徴する事柄。EVを普及させて、ユーザーの利便性を高める(現時点では「不便を解消する」の表現が妥当か)ための努力を、世界のどのメーカーよりも早く、積極的に行っているのが日産です。あえて割合を示せば、10点のうちの7点がハードウェア(クルマ)、3点がソフトウェア(周辺機器開発やインフラ整備)という感じでしょうか。
 
そこに、「クルマ新時代」の到来をひしひしと実感します。新ジャンルでトップランナーとなるには、優れたハードウェアを持っているだけではダメ。時代を切り開くクルマを普及させるためには、「人とクルマ」、「社会とクルマ」の良好な関係をつくりだす新しいシステムやツールが必要となります。電気自動車分野で、日産が「それ」を実践するのは、まさしく本気の証しと言えるでしょう。
 
とはいえ、EVの行く手には、航続距離の問題、電池の価格の問題、充電インフラの整備……と、越えなければいけない壁がまだいくつもあります。クルマの歴史に大きな一歩を刻んだリーフですが、マラソンに例えればまだ競技場を出て数km走ったぐらいの地点なのかも!? 世界のトップランナーであり続けるために、チャレンジングスピリットを忘れることなく、イヤーカーとしての誇りを携えて、今後とも意欲的な開発を進めてほしいものです。

まあ、リーフの圧勝で終わったのは、ボクと同様の考えをお持ちの選考委員が多かったからなのでしょう。ボクの場合、大きな問題はあとの4台の選択と採点でした。

胃がキリキリ痛むほど悩んで選んだのは、『ミライース』、『1シリーズ』、『パサート』、『508』ですが、大原則としたのはニューモデルおよびフルモデルチェンジか、否か。その年を代表するモデルには、少なくともルックスはオールニューが相応しいと考え、フェイスリフトモデルや派生モデルは除外しました。「本当に難しかった」というのが本音です。


森野恭行|カーレポーター
自動車専門誌のアルバイト、編集プロダクションの社員を経て、84年からフリーのカーレポーターとして活動をしております。生来のクルマ好き……昔なら「カーキチ」と呼ばれる人種で、スモールカーから高級サルーン、高性能スポーツカー、はたまた2〜3トン積みトラックまで、機会があればどんなクルマでもとことん試乗をしてきました。今の時代、自動車に対する逆風も吹いていますが、「クルマは人の生活を豊かにするモノ」、「クルマの運転は楽しい!」が私のモットー。出会ったクルマの個性や魅力、そして開発者が担当モデルにこめた情熱などを、新車紹介や試乗インプレッションなどを通して読者の皆さんにわかりやすくお伝えすることを心がけています。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。1963年生まれ。

プジョー508 BMW 1シリーズ《撮影 宮崎壮人》 ダイハツ・ミライース《撮影 宮崎壮人》 2011-2012年日本カーオブザイヤーは電気自動車の 日産リーフ。《撮影 椿山和雄》