日産自動車 電子技術開発本部 IT・ITS開発部の二見徹エキスパートリーダー《撮影 宮崎壮人》

11月29日と30日の両日、テレマティクスの専門家が集うカンファレンスイベント「テレマティクスジャパン」が開催される。ホンダのインターナビ事業室長 今井武参事開幕のキーノートスピーチを行うのが、日産自動車 電子技術開発本部 IT・ITS開発部の二見徹エキスパートリーダーだ。

二見氏は、「クラウドを生かした新たなクルマ社会の実現」をテーマに、「Internet of Things(IOT)時代に求められる車のM2Mコミュニケーション」「進化したグローバル情報ネットワーク時代における日本市場と日本企業の行方」などを議題に講演する。

日産と言えば、世界初の本格量産電気自動車「リーフ」の発売から、まもなく1年を迎える。累計の世界販売台数は10月末時点でおよそ1万7000台。テレマティクスジャパンの開催を前に、量産EV発売から1年の運用実績とその所感、そして今後の見通しについて二見氏に話を聞いた。


◆「急速充電器のあるところにEVは普及する」

現在、日欧米で販売したリーフのほとんどは、2Gまたは3Gモジュール(日本ではドコモのFOMAモジュール)を内蔵したテレマティクスを搭載しており、バッテリーを初めとする車両状態をリアルタイムにトレースし、運用状況を管理している。この1年でまず二見氏が意外に感じたのは、リーフの利用され方だったという。

「EVは都市内移動に使うコミューターと言われているが、リーフについてはかなりの長距離でも利用されていることが分かった。2011年2月から8月までに取得したデータでは、日本中を走るリーフの累計走行距離は1480万km。その走行軌跡を見ると、東名や名神高速道路を利用して、大阪から東京まで移動しているユーザーもいる一方で、中央道はほとんど利用されていない。これは急速充電設備がないから。つまり、EVが普及しないから急速充電施設が整備されないのではなく、急速充電スポットがあるところではEVが積極的に利用されているということだ」

また、EVにとってもっとも重要な部品であるバッテリーは特に運用面で注意を払ったというが、当初の予想よりも劣化が少ないことも分かっているという。「当社としては5年間で20%のバッテリー性能の劣化を保証しているが、これまでのデータを見る限り実際はその半分以下、5年で10%も劣化しない位のペースで来ている。これは相当良い状態だ」と二見氏。その理由としては、急激な温度変化など、想定していたほどシビアな地域で使われていないことが挙げられるという。


◆日本発のテレマティクスを世界で展開する理由

二見氏が「大変なチャレンジ」として語るのは、こうした車両状態のリアルタイム管理は、国内限定ではなく日本発信の世界共通サービスとして、日米欧の三極でほぼ同時にサービスを実現した点だ。「乗車前・乗車中・乗車後も通信できる環境を作ったのは、乗用の量産車についてはおそらく世界で初めて」と二見氏は指摘する。

リーフのテレマティクスは基本的に、スマートフォン/PCとの連携機能「EV-IT リモート操作」とナビ上で到達予想エリアや充電スポット検索などの運転サポート情報が得られる「EV-ITサポート機能」、そして車載情報端末である「専用カーウイングスナビゲーションシステム」から構成される。リモート操作では乗車前のエアコン起動やリモート充電、スマートフォンからのバッテリー状態チェックが可能で、サポート機能では充電スポットを確認しながらドライブプランが立てられる「ルートプランナー」機能などが利用できる。こうした全くおなじ機能を日米欧でのリーフ発売と同時に展開したのだ。

とはいえ日産は、車両のモデル展開に代表されるように、現地に合わせた仕様を展開する“ローカライズの文化”も一方では持っているはずだ。なぜ“日本発”にこだわる必要があったのか。

二見氏は、「先進国ではニーズが似通っているということと、テレマティクスの分野では日本がいちばん進んでいること」という2点を挙げる。特に後者は、「ITを利用して様々なファンクションや価値をつくるというのは日本は実績が豊富で世界の先端を行っている。それを広めようと言うことは自然なこと」と説明する。


◆グローバルモバイルアワードで部門ベストモバイルイノベーション賞を獲得

リーフのテレマティクスはいずれも携帯電話網を利用しているが、それぞれの国や地域にキャリアがいるため、コミュニケーションパスを確立しないとサービスの運用は難しい。そこで日本ではNTTドコモ、米国ではAT&T、さらに欧州では各国のキャリアをとりまとめるアグリゲーター業者を介して交渉。「日本では3GのFOMAモジュールを搭載するが、欧州や北米では2.5G(GPRS)のモジュールを採用する。3Gと2.5Gでは通信性能に差があるが、工夫によって同じようなファンクションを実現している」(二見氏)とのことだ。

世界中を走るリーフの電池状態、車両の状態のログデータは、通信によってグローバルデータセンターと呼ばれるクラウドに集積される。それこそが、世界同一仕様にこだわった理由だという。

こうした世界三極での同一テレマティクスサービス展開が評価されて、世界中の携帯電話会社で組織される業界団体「GSM協会(GSM Association)」が主催する「グローバルモバイルアワード」で、「自動車・輸送部門ベストモバイルイノベーション賞」を受賞するという栄誉を得た。BMWグループやPSAなどの競合製品を押しのけ、講評では「重量1.6トン(リーフの車重)のスマートフォン」と表現されるなど、日本発のITサービスが世界で認められたのだ。

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