upr取締役 IT事業本部長・ロケーション代表取締役 中村康久氏《撮影 北島友和》

物流業界で利用されている「パレット」をご存じだろうか。フォークリフトで貨物を運搬する際にフォークの部分を通す、「“スノコ”を裏表に組み合わせたような台」を想像してもらえればいいだろう。このパレット、人間で言えば空気と水と同様に運輸・物流の世界ではなくてはならない存在だ。


◆パレット…物流業界にとっての“水と空気”

日本パレット協会の統計によれば、国内で保有されているレンタルパレットは、木製・プラスチック製など全て合わせておよそ1700万枚、さらにパレットの生産量は7450万枚にもおよぶ(いずれも2010年度)。

生産量の一部は海外で流通するため、国内で流通しているパレットはレンタル・買い取りを合算すると合計6000万枚程度と推計される。レンタルパレットだけの市場を見ても年間400億円という巨大な市場だ。

パレット市場の構造について簡単に説明しよう。パレットのユーザーは主に、倉庫で貨物の運搬をおこなう物流事業者が中心。パレットは購入かレンタルかを選んで使用することになるが、流通量でいえば購入がレンタルの3〜4倍と推定され、圧倒的だ。しかし、レンタルの市場が根強く存在するのは、パレット需要に繁忙期と閑散期の差が大きいためだ。つまり、パレットを自社購入しているユーザーに対して、繁忙期に足りなくなった分をパレット各社はレンタルを提案している。

レンタルパレットの事業会社は日本パレットレンタル、日本パレットプール、そしてuprが上位3社。年商は最大手の日本パレットレンタルが160億円超、uprが約58億円、日本パレットプールが約53億円だ(数字は直近の通期決算、パレット以外の事業を含む年間総売上)。


◆低迷する貨物量、位置情報サービスに光明

そのuprに、NTTドコモ ユビキタスサービス部のITS推進室室長、法人営業部マシンコム企画部長としてITSやM2Mモジュール分野に関わってきた中村康久氏が取締役兼IT事業本部長に就任。さらにuprの100%子会社でシステム開発・運用をおこなうロケーションの代表取締役にも同時に就いた。

内需が低迷し国内ロジスティクス市場が行き詰まる中で、各社は効率化や新市場の開拓を目指して切磋琢磨している。なかでもuprはパレット業界3位の地位ながら、新規事業に積極的に取り組んでおり、移動体通信を活用したソリューションも数多く提案してきた。そうした新規事業の取り組みをさらに強化するために、今回M2M分野のエキスパートである中村氏を向かい入れたというわけである。

「貨物が増えないとパレット需要は増えない。しかし、国内の貨物取扱い量は現在、戦後最低のレベルにまで落ち込んでいる。こうして、国内の貨物が減る中で、システムで提案することで効率化を図ったり、業種・業界を超えたアプローチでパレット事業の付加価値をつけていく必要がある」と中村氏。


◆システム開発会社を取り込み内製化

uprでは、以前からパレットの紛失対策として、PHSモジュールをパレットに設置して追跡したり、貴重品輸送の際にもモジュール内蔵ケースでリアルタイムの位置確認を可能にした「なんつい」というサービスを2003年より提供してきた。また、ローミング機能を持たせたW-CDMAモジュールを利用したグローバルトラッキングシステムなどもサービスのラインナップに加えている。さらに農作業や電力などの様々な遠隔監視システムに加えて、カーシェアリングのサービスをASPで提供するサービスや導入のコンサルティングなど、自動車分野にまで同社の事業は拡大している。

「カーシェアリングについては、『カシェリ』という名称でパイロット事業的に自社サービスもやっているが、車載器から予約システム、運用に至るシステムベンダーとしてtoBで他社に提供するのが本業。当社は物流がコアビジネスとしてあるが、このカーシェアリングも含めて、今後モバイルの世界に積極的にチャレンジしていくために、わたしも参画させていただいた」と中村氏は説明する。

uprの新規事業開発を下支えするシステム開発会社がロケーションだ。ロケーションの前身はPHS/携帯電話通信網による位置情報サービスを提供していた東芝ロケーションインフォで、2005年の9月にuprが100%の子会社として経営に参画し、現社名に改称した経緯を持つ。各キャリアでクローズだった位置情報を同社はマルチキャリアで把握できるサービスとして提供し、営業社員の位置情報管理などに活用されるなど、大規模なtoB案件も実績があるという。

「(100%子会社)ロケーションがシステムの開発とプラットフォームの運用を担うため、uprの位置情報ソリューションは全て内製になる。パレットを始めとする物流部門はuprが、それ以外の新規事業はロケーションが開発から運用を取り持つ。今後もB2Bがメインだが、B2B2Cという形でコンシューマーを意識したサービスも手がけることになるかもしれない」(中村氏)。


◆「シェア」をキーワードに、物流・位置情報・通信で新事業を展開

今後、物流の業界においてもキーワードになるのは「シェア」だという。パレット業界ではサプライチェーン上でパレットを共有化する「パレットリターナブルシステム」と呼ばれる施策を、国際的な協業を視野に入れつつ国交省が主導している。

「レンタルパレット業界としては、所有よりもシェアという考え方を持ち込んで、この割合を増やしていこうと取り組んでいる。このシェアの概念の中に、他の新事業を持ち込んで展開しようというのが狙い。トラッキングや遠隔監視、そしてカーシェアリングにしても、“位置情報の共有”というところでは共通だ」(中村氏)。

現状、新規事業の売上構成比は10%に満たない。「まったくの新規事業でやりがいはある。これからどれだけチャレンジできるか、自分でも楽しみ」と抱負を語る中村氏のミッションは、いうまでもなく通信とロジスティクスを連携したサービスを強化し、これら新規事業をもうひとつの収益の柱にまで成長させることだ。

uprのパレット カーシェアリング用車載端末 追跡システム「なんつい」のPHS通信モジュール upr取締役 IT事業本部長・ロケーション代表取締役 中村康久氏《撮影 北島友和》 遠隔監視システム「なんモニ」の電力監視事例