【インタビュー】バッテリー交換式EVタクシー、LPGスタンドとの協業がカギに…ベタープレイス

バッテリー交換式電気自動車(EV)および充電インフラサービスで、他に類をみないEVソリューションを展開するベタープレイス。日本ではEVタクシーの実証実験が記憶に新しい。同社がめざす次のステップ、そして日本でのEVビジネスの課題とは。

ベタープレイス・ジャパン、シニア・バイスプレジデント 事業企画本部・本部長の三村真宗氏に話を聞いた。


----:日本で実施したEVタクシーの実証実験の手応えは?

今回の実証実験では日本交通さんに協力していただきましたが、他にも多くのタクシー会社の経営陣に見て頂き、前向きな反響を頂いています。数社は固定式バッテリーEV(『リーフ』や『i-MiEV』)を導入していますが、連続運用性においては信頼性が低い。一方でバッテリー交換式EVなら、燃料費の安さ、環境性能と航続距離をトレードオフする必要がないのです。実験を終えて、バッテリー交換式EVにとって、タクシーが戦略的セグメントであるという仮説にブレはありません。

固定式EVで急速充電を利用した場合、15分〜20分の充電で最大80%までしか充電されません。一方で交換式EVならば約1分でほぼ100%の状態にすることができます。例えば残り30%の状態で、固定式EVが充電をおこなったばあいプラス50%しか補充できません。つまり実用域が電池容量の半分ということです。これではとても営業になりません。この差が非常に大きいのです。

また、直接バッテリー交換式EVとは関係ないかもしれませんが、今回の実証実験で使用したEVには、データセンターを活用したバッテリーモニタリングシステムを採用しました。電池残量を、サーバを経由して車載のiPhoneでリアルタイムに見られるようにしたのです。これまで曖昧だった電池残量を詳細に表示することで、ドライバーに電池と(充電)時間を無駄なく使おうという行動変化がありました。電力の可視化の重要性、という点でも今回の実験は得られたものがあったと思います。

----:バッテリー交換式という点に注目が集まっていますが、通常の充電設備についてはどうお考えなのでしょうか。

バッテリー交換ステーションが事業の柱であるのは間違いありませんが、固定式EVに向けたインフラ整備についても順次進めています。例えば、オーストラリアでは2012年の商用展開をめざし、インフラ整備を進めているのですが、ここでは交換式よりも先に固定式向けの充電サービスから開始します。日本についても、交換式EVとタクシービジネスの親和性を確認することはできましたが、まだまだ時間はかかるでしょう。となると固定式のインフラが先になることも考えられます。

とはいえ、固定式EVに向けた充電インフラサービスでは収益性が課題です。ある方が「急速充電スタンドは公衆トイレのようなもの」とおっしゃっていましたが、これはEVの普及にとって不幸な点だと思います。

一般コンシューマー向けに「EVは普通乗用車に近いんですよ」という売り方をしてしまうと、航続距離やインフラ整備の面ばかりが取り沙汰されてしまう。EVの得意なところで勝負しなければ意味が無いのです。普通に考えたら、EVとタクシーの相性は良くありません。しかし、そこにバッテリー交換という、ベタープレイスならではの発想の転換がありました。

EVに限りませんが、革新的な製品ほど最初はセグメントを絞っていかなければいけないと考えています。こうした製品の多くは、革新性こそあるものの、既存の製品に劣る点もたくさんあります。液晶モニターや携帯電話もそうでした。それぞれPC向けや自動車電話にセグメントを絞って技術力、量産性を高めたからこそ普及にこぎつけることができたのではないでしょうか。

EVも商用利用で技術、ボリュームを稼ぎ、一般利用に展開していくという方法が、普及の道筋と言えるのではないかと考えています。我々としては、短距離利用を中心としたタクシー、あるいは公共交通機関などと組んだビジネスを考えていきます。一方で、固定式としてもセグメントを絞って取り組んでいくことになるでしょう。

----:バッテリー交換ステーションは、通常の充電スタンドと比べ敷地面積が大きな課題となりそうですが。採算はとれるのでしょうか。

タクシーという閉じたシステムの中で、我々が有効活用をめざしているのがタクシー向けLPGスタンドです。現在都内だけで約100か所のLPGスタンドがあるのですが、どこも疲弊が見られます。LPGスタンドの法定耐用年数は30年といわれており、それが切れかかっているのが今なのです。また、減車や『プリウス』の普及にともないLPG需要が少なくなってきているのだと聞いています。ここで我々が、新しいエネルギー産業として介入し、共存できるビジネスモデルを作り上げて行く事ができるのではないかと考えています。

ステーションのオーナー様には、以前と同様またはそれ以上の収益性を見込んでもらい、協業業者として場所を提供してもらうのです。実証実験で虎ノ門に設置したバッテリー交換ステーションで、都内の約4分の1を運行範囲としてカバーできました。例えばこのほか、板橋、墨田、江戸川あたりに設置できれば東京中をカバーできるのです。範囲が広くなれば台数も必要でしょう。そして台数を増やし、さらにステーションの密度をあげて行くことができればと考えています。

一方で、固定式向けの急速充電についても、決して排他的な考え方ではなく、大いに利用していくことを考えています。

----:今後、日本で展開していくにあたっての課題とは?

ひとつの大きな課題が、車両の調達です。当初よりルノー日産のゴーン社長に理解を頂けたこともあり、日産『デュアリス』、ルノー『フルーエンスZE』をバッテリー交換式EVとして提供頂く事ができました。今後に向けては、現在3つのアプローチをおこなっています。

ひとつは、ルノー日産だけでなく日本の自動車メーカー各社に対し、交換式EVをつくって頂けるようにアプローチしています。これは長期的にじっくり取り組んでいく必要があるでしょう。

もうひとつがオーストラリアで運用されるフルーエンスを日本に導入する、という方法です。オーストラリアでのリリースにともない、右ハンドル化されるため、日本での実証実験ベースとして導入しやすいというメリットがあります。

最後が海外メーカーへのアプローチです。いずれも時間がかかるものだとは思いますが、インフラ整備に向けた働きかけと同時に、じっくり取り組んで行こうと考えています。

----:海外を含めた直近の話題、展望などお聞かせください。

2011年中をめざし、中国・広州市での交換式EVの実証実験をおこなう予定で準備を進めています。また、これまで本社があるにも関わらずビジネスを展開できていなかったアメリカでも実証実験を近々開始します。東京ではEV3台、1ステーションでしたが、サンフランシスコではEV60台、4ステーションとこれまでにない規模での実証実験となります。

東京では1ステーションだったため、常にステーションに戻ることを考えたピストン型の運行でしたが、ステーションが複数あることで流し運行のようなネットワーク型のオペレーションが可能となります。ここからどのようなデータが得られるのか、非常に楽しみです。

またイスラエルでの運用も年内に開始されます。イスラエルは日本などとは経済環境が全く違う。ガソリン車よりもEVの方がむしろ安いのです(ガソリン車の取得税は78%、さらにデンマークは180%)。ガソリン代も1リットルあたり250円〜300円と非常に高い。このため、日本とは逆に、一般人がEV、セレブな人たちが趣味としてガソリン車を買う、という構造になるかもしれません。しかし、値段がどうあれ、それが不便であれば誰も見向きもしないでしょう。それを解消するのがベタープレイスが提案する、「1分で満充電に出来る世界」なのです。

EVは今後、産業構造の転換を促す可能性のあるものです。特に日本では車体のパフォーマンスや技術的な議論ばかりがなされているように感じます。しかし、今できる車両技術を考えると、インフラをどうにかしていかなければいけないのは明白です。他にない立ち位置のプレイヤーとして、ぜひベタープレイスを見て頂きたい。そして、EVで先進しているのは日本だけではないということ、海外のEVインフラがどのように普及しつつあるのか、そのヒントとして頂ければと思います。



三村氏は、9月7日、8日に開催されるEVビジネスに関するカンファレンスイベント「PHEV・?EV Infrastructure and Businessジャパン2011」に登壇予定。ベタープレイスが描くEVビジネスの将来についてプレゼンテーションをおこなう。

■PHEV・?EV Infrastructure and Businessジャパン2011
会場:ヒルトン東京(新宿)?日程:9月7日〜8日
担当:島田(電話:03-3464-8541)

東京・六本木の実証実験で運用されたバッテリー交換EVタクシー 東京・六本木の実証実験で運用されたバッテリー交換EVタクシー バッテリー交換ステーションの構造 ルノー・フルエンスZ.E. ベタープレイスが設置したデンマークの充電スポット