マルチエアの疑問---油圧とスプリングが確実

フィアット『500ツインエア』のエンジンには、吸気バルブの可変機構「マルチエア」が搭載されている。

マルチエア自体はアルファロメオ『MiTo』に搭載されており、このツインエアが初採用というメカではない。けれども、これまでの紹介記事を見ても今一つ、その仕組みが分かり難いと感じていた。

そこでイタリアから開発したエンジニアがせっかく来日してくれたのだから、その仕組みを詳しく聞かない手はない。ヴィットリオ・ドリア氏は、マルチエアの解説をムービーを交えながらマルチエアの仕組みを解説してくれた。

それによると吸気バルブはソレノイド(電磁石の一種)によってバルブが駆動されているのではなく、ソレノイドがバルブ開閉用の油圧を制御しているというのが実際の仕組み。見方によってはSOHCの4バルブヘッドの一種なのである。

マルチエアは、カム山によって発生させた油圧をソレノイドバルブの開閉で減少させることで、吸気バルブのリフト量を減らしたり、バルブの開閉動作を遅らせたり早めたりしているのだ。

一回の吸気行程で2回バルブを開閉させることもできるが、一度開くために使った油圧はソレノイドバルブが開放してしまうと、再びバルブを開く力にはならないから、2度目の開閉もカム山がピークを迎える前に始めなければならないという制約はあるようだ。それでも、通常のバルブ駆動ではとてもできない芸当をやってのけている、という点はやはり凄いとしか言いようがない。

しかしカム山の通りにバルブを開閉させないのであれば、別に吸気バルブの駆動にカムシャフトを使う必要はないのでは。その方がカム山の形状に左右されない、幅広いバルブ駆動の制御ができそうだ。

「いいえ、カムを使わない方法となると、別の方法で油圧を作り出さなければなりません。構造のシンプルさも考えると、現時点ではこれがベストな方法なのです」。バルブを駆動するための油圧を、確実にかつコストも抑えた方法で生み出すためにも、カムによる駆動がいいと言うのである。

実際、このマルチエア開発の初期には、油圧を使わずソレノイドだけで吸気バルブを駆動させる方法も検討されていたらしい。しかし、吸気バルブは高温下で高速度に駆動されているため、色々と障害も多く、実用化は難しかったようだ。

耐久性や信頼性を確保するには、油圧による駆動とスプリングによるリターンが確実、というのが現在のFPT社の答えなのである。斬新で合理的なだけでなく、確実な方法。マルチエアは当面、フィアットの幅広い車種に搭載が広がることになりそうだ。

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