ツインエアの振動---コンパクトなエンジンにデカいバランサー

フィアット『500ツインエア』の875cc直列2気筒エンジンは、実に大胆かつ綿密な計算の上に成り立っているハイテクなエンジンだ。

日産『マーチ』が3気筒エンジンを採用したことから、今の日本では“レスシリンダー”という発想は珍しくはないかもしれない。けれども、フィアットは思い切って2気筒にした。そもそも先々代のフィアット『500』はRRながら空冷直列2気筒だったのだから、先祖返りと見れなくもない。

確かにエンジンはコンパクトになった。しかしスケルトンを見るとクランクシャフトの横にはかなり大きなバランサーが備わっている。

もちろん振動低減によって軽量化やノイズ対策も有利になるから、たとえ損失があってもバランサーを搭載していた方が効率がいいことは知っている。しかし、このバランサーはバランサークランクと等速で回転しているように見える(ギアの大きさがほぼ同じ)が、これだけの大きさのバランサーを等速で回さなくても、他に効率のいい方法はないのだろうか。確か三菱のサイレントシャフトはもっと細いバランサーをエンジン回転の2倍の回転数で回していたと思う。

そんな疑問を来日したFPT生産技術部門 ガソリンエンジン担当チーフエンジニアのヴィットリオ・ドリア氏に訊いてみた。

「三菱のサイレントシャフトは4気筒エンジン用なので、エンジンの二次振動を打ち消すために2倍のスピードで回していたのだと思います。ツインエアは一次振動が問題だったので、クランクと等速に回す必要があるのです」。

2気筒の4サイクルエンジンは、均等間隔で燃焼させるとクランク1回転に1回の爆発になる。これはモロに一次振動の発生源となり、相当に大きな振動を発生させるのだ。バランサーはそれを軽減するための措置ということだ。

しかし一次振動はかなり軽減されているものの、二次振動(エンジン回転数の二倍となる周波数帯の振動)の低減には効果はないから、4気筒のようにスムーズにはならない。それでも、ツインエアの音や振動は決して不快過ぎるというレベルではなく、ネオクラ以前の旧車を知っているマニアからすればどこか懐かしい雰囲気を感じさせるエンジンに仕上がっている。

こうした微妙なチューニングはコンピュータによる解析などではなく、人間の感性に基づく部分。これぞイタリアンな自動車メーカーの真骨頂なのかも知れない。日本の軽自動車メーカーもぜひ参考にして、味のある2気筒エンジンを完成させてほしいものだ。

ツインエアの振動---コンパクトなエンジンにデカいバランサー ツインエアの振動---コンパクトなエンジンにデカいバランサー