プログラム開発推進本部 水野成夫(みずの・しげお)主査《撮影 高木啓》

今回のマツダ『デミオ』の場合、開発のプロセスはどのように進んでいったのだろう。プログラム開発推進本部水野成夫(みずの・しげお)主査は「プロセス面で考えると、結構無茶苦茶ですよ」という。

「普通クルマの開発は『こんなクルマを作りたい』というオーバービューから始まって、特徴やウリにするポイントを出してから、それを達成する手段を見つけてきて、必要なコンポーネントを起こす。そうやってクルマの開発は進めていくんですよ」

「そういうプロセスを全部すっ飛ばして、『とりあえずデミオに(SKYACTIVを)載せろ』、『(燃費)30km/リットル出せ』っていう話でしたから。私の経験の中でもかなりイレギュラーな方法ですね」

「イレギュラーだらけなんですが、社長が口に出してしまったという既成事実があります。そして時間がないという制約。そういう条件の中で開発する人間は、知恵の出し方も集中して効率が上がっていくんですね。しかも見つけた手段をやってみる時にはダメだった時のリスクを考えて、別の手段も同時進行させるといったように先回りもしていくようになりました」

それは決して開発の効率化などではない。むしろ手数は減らさず、懸命になって実現の可能性を模索しくエンジニアたちの作業の積み重ねだった。まるで背中に刃物を突き付けられながら作業していると思うほど、追い立てられている気分だったそうだ。

「そうやって全体の力が集約されてできたのが、今回のデミオなんです。今思えば、あの時の社長の発言は非常に効果がありましたね。あれがなければ、このタイミングで新型デミオをリリースすることはできなかったでしょう。またチームだけに任せていたら、ひょっとしたら29km/リットルで納得してしまったかも知れません」

水野氏の話しぶりからは、安易な妥協に甘んじることは想像できない。だが、もし開発がトップダウンでなければ発売がさらに何か月も伸びた可能性も否定できない。やはり画期的な燃焼技術、SKYACTIVを現時点で実用化するには、相当な負担を強いられたのだ。普通ならあと1年は開発に費やし、エンジンと並行して新型の車体を開発するはずだろう。

けれども2009年に発表した先進技術の搭載が4年後になってしまうのでは、その間にハイブリッドカーに市場を食い尽くされてしまう恐れもある。だからデミオでの搭載を急いだのだ。さらに水野氏は「来年にはフルSKYACTIVのクルマを出します」という。

こうしてマイナーチェンジという制約の中で、見事に30km/リットルを達成したのが「デミオ13-SKYACTIV」だ。

デミオ13-SKYACTIV《撮影 高根英幸》 デミオ13-SKYACTIV《撮影 高根英幸》 デミオ13-SKYACTIV《撮影 高根英幸》