ゼンリンデータコム 企画・制作本部 モバイルナビ制作部マネージャーの齋藤高弘氏《撮影 北島友和》

ゼンリンデータコムは、7月にauのAndroid向け「いつもNAVI」をバージョンアップして機能拡張するともに、au oneマーケットでのキャリア月額課金(315円/月)に対応した。

Android向けのいつもNAVIは、2月からトライアル版として提供されてきたが、今回のバージョンアップでの機能拡張と月額課金導入にはどのような狙いがあるのか。企画・制作本部 モバイルナビ制作部マネージャーの齋藤高弘氏に聞いた。


◆地図の操作感向上・検索DB強化・月額課金導入

----:7月末にauのAndroid端末向けアプリがバージョンアップされましたが、今回のアップデートの概要についてご説明ください。

齋藤:まずトライアル版から今回のアップデートまでの経緯を説明しますと、トライアル版の「いつもNAVI」に入れていたアンケート機能からのフィードバックをもとに、Androidマーケットのコメント・評価などを集め、機能改善のポイントを絞り込みました。

そして今回のバージョンアップで狙った機能向上としては、大きく3つがあげられます。まず地図スクロールやレスポンスの向上。次にホテルやグルメといった検索データベースの充実です。さらに3つめがユーザー利用しやすい課金方法の対応です。月額315円で利用できるようになっただけでなく、“お試し機能”を入れていて、有料版いつもNAVIの機能が30日間無料で試せます。

----:描画スピードの向上を謳っていますが、具体的にはどのような技術的改善や最適化が施されたのでしょう。

齋藤:見た目の部分で単純に描画速度を上げることはさほど難しくないのですが、「どこまでも地図を見たくなる」ようなフィーリング面でのチューニングを入念に行いました。特に、画面を指でスライド(フリック)させたときに地図が自然に惰性で動くような操作感を実現しています。また、さまざまなレイヤーの描画順を最適化するなどして描画スピード向上へとつなげています。

----:御社はすでにフィーチャーフォンの いつもNAVIで、リッチで高速な地図表示を実現しましたが、こうしたノウハウがAndroidやiPhone、Windows Phoneなどのスマートフォンに継承されていると考えていいのでしょうか。

齋藤:フィーチャーフォンで得た技術やノウハウは、スマートフォンにも継承させていますが、違いもあります。地図描画を例に挙げると、フィーチャーフォンでは上下左右のハードキーを押し続けることで地図がスクロールされるので単純に描画スピードを追求することでしか進化がありませんでした。しかし、スマートフォンは一度フリックしたときに、「狙ったところで止まる」という感覚的な使いやすさを実現させなければなりません。より自然な操作感のニュアンスを調整するのはかなり苦労しました。

----:Android向けのいつもNAVIでは、地図情報をローカルに保存せずに、サーバへの通信型を採用していますが、この理由を教えてください。

齋藤:当社ではフィーチャーフォン向けなどには通信型(オフボード型)とWindows Phone向けではローカルに入れる搭載型(オンボード型)を展開しています。ローカルに保存するオンボード型は描画のレスポンスや圏外での利用などでメリットはありますが、定期的に地図の更新を行うわずらわしさがあること、データサイズが大きく限られたスマートフォンのストレージをかなり占めてしまい、ダウンロードの時間がかかることなどのデメリットがあります。通信型であれば、利用者はそうしたわずらわしさから解放されて、常に最新の地図情報やスポット情報を利用できるというメリットがあると思います。

----:展示会などでは、通信型をベースとしながら必要に応じてローカルにキャッシュするというわいゆる「ハイブリッド型」のアプリも出展されていましたね。

齋藤:はい。例えば東京から京都に行きたい場合にルートを引いた際に、そのルートの周辺の地図情報をキャッシュしておくことで、電波が弱いところなどでも途絶えることなくナビを利用できるという仕組みを今後用意していく予定です。


◆月額課金導入でフィーチャーフォンからの移行をスムーズに

----:Android端末ごとの最適化などは施されたのでしょうか。

齋藤:実は苦労しましたね(笑)。フィーチャーフォンとはまた違う悩ましい事象がありました。フィーチャーフォンの場合はキャリアがおおよその仕様を固めているので、検証は比較的容易でした。しかし、Android端末はどのキャリアでもOSのバージョンでも同じと思っていましたが、これが意外にも機種依存が多いのです。OSのバージョンの問題もあれば端末のファームウェアの問題もあって。それらを個別に検証しながら最適化を図りました。

----:これまで、スマートフォンアプリでのマネタイズ(収益化)は難しいといわれてきましたが、au月額課金の導入によってこの流れは断ち切れると考えていますか。

齋藤:正直「わからない」というのが本音ですが、期待は非常に大きいです。買い切りのアプリでは出費に対するハードルが高いので、普及には月額でのキャリア課金が必須と考えていました。フィーチャーフォンで いつもNAVIを評価していただいたお客さまが、スマートフォンへと移行しても引き続き利用していただける環境を整備することが重要ということで、今回のバージョンアップでauの月額課金を取り入れたという事情もあります。auのAndroid版では、フィーチャーフォンでご利用になられていた いつもNAVIのIDを引き継ぐことも可能です。

----:スマートフォンではGPSの精度面で不満もあるのではないですか?

齋藤:自律センサーとの連携は広がっていくと思います。端末の加速度センサーを利用するという手もありますが、センサーの限界やGPSで追いきれない部分、精度の個体差などもあります。車載用に最適化されたジャイロや加速度センサーを備えた専用クレードルに固定させる、といった方法も検討はしていますが、コストの負担やスマートフォンの手軽さをスポイルしてしまうのでは、という懸念もあります。

----:いっぽうで、車載モニターUIにスマートフォンアプリの画面を表示させる「ターミナルモード」の具体的な製品化に向けて動いている企業もありますが、こうしたアプローチの可能性はありますか。

齋藤:もちろん検討には入れていますが、「いつもNAVI」について言えば、徒歩・電車のドアtoドアと助手席でのナビを組み合わせた“トータルなナビ”という点で、車載用に特化されたものとは一線を画しています。もちろんカーナビ機能を強化していくという段階で(車載側の)クレードルやセンサーを連携活用していくのもひとつの手だとも考えていますが、両商品は住み分けができていくのではとも思います。

----:先ほど出た話で、いつもNAVIでは検索結果から乗換案内/徒歩ルートと車ルートを選ぶことができますが、クルマと歩行/乗換案内などシチュエーションを切り分けずにオールインワンとした理由を教えてください。

齋藤:普段ユーザーがどこかに行くことを思い立ったとき、まず目的地を検索してから車で行くか、電車で行くか、徒歩で行くかなどを選択できた方が便利なのでは、と考えた結果です。ですので「いつもNAVI」は、「流れを途切れないように、すべてをまかないますよ」を重視した“ワンアプリ”になっています。料金的にも全部込みのナビサービスとして月額315円というのがセールスポイントです。たとえスマートフォンでもセットで提供するというのが我々のスタンスです。

----:さまざまな交通手段に対応できるナビアプリならば、常駐させてすぐに現在地からのルートを引く、ということもできそうですね。

齋藤:ええ。あるいはウィジェットを置いて用途によって違うアプリへと導くというような考えもあります。スマートフォンはウィジェットも含めて、単独のアプリを横断しやすい仕組みになっています。例えばグルメ系アプリから、簡単に「いつもNAVI」などを呼び出して、単に1地点でもいいし2点間でもいいのですが、これらポイントを「いつもNAVI」へと飛ばしてルートを引きナビを始めるというようなサービスも今後は可能です。


◆ロケーションサービスにさらなる付加価値を

----:今回のバージョンアップのタイミングは夏休みの行楽シーズンをターゲットにしていたと思いますが、この時期におススメしたい機能などがあれば教えてください。

齋藤:行った先が分かる“塗り絵”的な機能の「訪れた街」が話題を呼んでいます。GPS測位情報をもとに、訪れた地が市区町村レベルで赤く塗られていきます。スタンプラリーの楽しみに似た盛り上がりも見られますね。確かに、白地図を塗っていくのを楽しみにしていると、ポコッと空いているエリアなどを発見した際についつい塗りつぶしたくなる衝動に駆られるかもしれません。

----:ジオキャッシングなどの宝探しゲームなどにも似ていますね。最後に、今回はauのスマートフォン向け月額課金制サービスですが、今後のドコモやソフトバンクなどへの対応予定などを教えてください。

齋藤:ドコモのスマートフォンの一部にはプリインストールアプリとして、いつもNAVIベースの「ドコモ地図ナビ」が搭載されていることもあり、課金サービスについてはまだ検討段階です。ソフトバンクもキャリア側で体制が整ったという話もあるので、近い将来にはauスマートフォント同様の課金体制が整うのではないかと思います。

----:今後、いつもNAVIはどのようなナビゲーションサービスを目指していくお考えでしょうか。

齋藤:AndroidにはGoogleマップやナビが標準で装備されているので、我々はどう地図情報サービスで差別化できるかが課題ですし、その差別化ポイントがあって初めて課金でのビジネスが成り立ちます。検索エンジンにはないPOIや目的地検索の提案、詳細名地図、分かりやすい案内、そしてオービスや渋滞、案内画像など、ユーザーが求める付加価値はまだたくさんあります。当社ではこうしたニーズに応えるべく、地図会社の強みを武器とケータイ/スマートフォンで培ったロケーションサービスのノウハウを武器に、様々なプラットフォームで勝負したいと考えています。

《聞き手 北島友和》

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