Quinceの千葉市消防局カラーリング仕様。使い勝手に関して、ロボットの専門家でない消防隊員に使ってもらうことで操作に関するフィードバックを半年間ほど行った

8月4日、東北大学東京分室内会議室において開催された「IEEE」の記者セミナー「日本のロボット利用に関する現状と課題 〜福島第一原発における災害用ロボット活用事例から読み解く〜」。

東北大学教授兼NPO法人レスキューシステム研究機構(IRS)会長の田所諭(たどころ・さとし)氏のセミナーの中から、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の戦略的先端ロボット要素技術開発閉鎖空間内高速走行探査群ロボットの開発プロジェクトで誕生した、国産ロボットの『Quince』の活動状況を紹介する。

Quinceの開発はIRS、東北大、千葉工業大学の3者によって行われ、2010年4月にプレス向けに試作段階で発表された。4脚のサブクローラ(フリッパー)を備えたクローラ型の災害対応閉鎖空間内探査ロボットだ。同年8月に完成し、その後は千葉市消防局に貸与して実際に消防隊員に訓練などに活用してもらうことで、操作性などに関する実地テストを行ってきた。

本来は、CBRNE(Chemical Biological Radiological Nuclear Explosive:化学・生物・放射性物質・核・手製爆弾)災害の際に、消防隊員などに代わって危険なエリアで情報収集活動を行うことを目的としたロボットである。震災の場合、倒壊家屋の下に閉じ込められている要救助者の探索などをメインに想定している形だ。

東日本大震災直前の3月9日まで米国の米国テキサス州の災害実験フィールド「ディザスター・シティ」で訓練を行っており、前回突破できなかった40m四方の木材がれきフィールドの突破に世界の参加ロボットの中で唯一成功。40m四方のコンクリートがれきフィールドは前回突破しており、まさに世界一の運動性能を証明した。

そして地震発生となり、田所氏らは急遽日本へとって返し、ほかのロボットともに現在使用可能なロボットのリストにQuinceを加え、14日には東北経産局、宮城県、仙台市を通じて倒壊家屋下における探索任務などのニーズに備えてスタンバイした。

しかし、東日本大震災における家屋が倒壊したケースは数える程度で、圧倒的大多数が津波による被害だったこと、予想をはるかに上回る大規模な通信網の崩壊などで、Quinceを初めとするロボットに関しての活用ニーズが被災現場から上がってこなかったということもあり、一般現場でのQuinceが出動する機会は得られなかった。田所氏自身の所属する東北大学で、全壊してしまった人間環境系研究棟の調査を行っただけにとどまった。

その後、3月中旬からは福島第一原子力発電所の事故が発生し、世界を見回しても、狭く急な階段しかない原子炉建屋内で唯一階上および階下へ移動できる可能性のある数少ないロボットとして、機体開発を主に担当した千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)の副所長である小柳栄次氏らが自主的な改造をスタートした。原子力事故のような、非常に放射線レベルの高い現場での使用を想定した仕様ではないこと、暗闇に支配されている上に水素爆発で障害物だらけとなった原子炉建屋内に対する大幅な改造が行われた。

そして、5月20日に東京電力からQuinceの貸与の正式な依頼となり、東京電力のスタッフによる操作訓練や、正式な依頼によるミッションに対応したさらなる改造を経て、6月8日に出動することを千葉工業大学で発表。当初はその日の夕方に出発する予定だったが、さらなる改造や操作訓練などに時間を要し、20日に1台目のQuinceが福島原発に向かった。

2011年3月9日、米国テキサス州ディザスター・シティの木材がれきフィールドにおいて踏破している最中の様子。世界で初めて、40m四方の同フィールドを踏破した機体となった。IRSの資料より Quinceで何ができるかという一覧表。赤字がQuinceのポイント。高い運動性脳と、国内で開発していることによる柔軟性が特徴だ。田所氏のプレゼン資料より Quinceの原発仕様。中央に支柱が立ってさまざまな機器が取り付けられ、かなり重心が高くなっているのが想像しやすい Quince原発仕様の水位計設置バージョン。残念ながら東電の凡ミスで、水位計設置はうまくいかなかった。田所氏のプレゼン資料より 東北大学教授兼NPO法人レスキューシステム研究機構会長の田所諭氏。Quinceを開発したひとり