フランス軍警察のハンディ型スピード取締機

「速度取り締まり機」の予告標識を巡って、フランスが揺れた。フランス内務省は2011年5月24日、さきに発表した道路交通に関する法案の一部を白紙撤回した。

ここのところフランス国内では4か月連続で交通事故死者が増加し、2011年4月には前年比20%増の死者数を記録した。このままでは年間死者数が4000人を超える恐れが出てきたことを受け、フランス政府は5月11日、とくに飲酒運転と速度違反に対する厳罰化を盛り込んだ法改正案を発表した。

まず飲酒運転に関しては、違反点数および反則金を加算。いっぽうの速度違反に関しては、速度取締機を感知する車載探知機、いわゆるレーダー探知機の使用禁止を盛り込んだ。加えて、速度自動取り締まり機の数百メートル手前に設置する「この先レーダーあり」を示す予告標識を撤去することにした。取締機周辺だけ速度を落とす運転者を減らすのが狙いだった。

しかし法改正案発表から約2週間後の5月24日、フランス内務省は、レーダー予告標識撤去については白紙撤回することを発表した。

24日夜の仏TV5ニュースに出演したクロード・ギュアン内務大臣は、撤回の理由についてキャスターから再度にわたって質問されたが、「専門家から意見を聞いた」として明確な説明を避けた。

代わりに大臣は「今後は『教育的レーダー』の導入を推進する」ことを強調して質問をかわした。『教育的レーダー』とは近年各地で設置が始まった新型の電子表示板で、レーダーで感知した通過車両の速度だけでなく、反則金額や減点数も瞬時にデジタル表示されるもの。

そうしたなか囁かれているのが、「今回の“朝令暮改”は、2012年の大統領選挙対策ではないか?」との声だ。

5月11日の改正道交法案発表に対し、交通事故遺族団体は一定の評価を示したものの、車載レーダー探知機製造業界やドライバー団体は一斉に反発した。「車載レーダー探知機や路肩のレーダー予告標識は、いずれも充分な速度抑止効果がある」というのが彼らの主張だった。また、カーナビゲーションや携帯電話と一体タイプのレーダー探知機も存在する今日、実際どこまで厳格に取り締まれるのかを疑問視する声も上がった。

したがってレーダー予告標識撤去の白紙撤回は、ドライバーの不満を抑える=政権への支持を維持するのが狙いではないか、というわけである。

ちなみに、フランスの主要自動車雑誌のひとつ『オトプリュス』誌にとって、「最新レーダー設置場所情報」は、看板ページのひとつだ。またカー用品全国チェーンの車載ーダー探知機コーナーに並ぶ品数は、周辺諸国の店を圧倒的する。

いずれもフランス人ドライバーの速度取り締まり機に対する警戒心・反発心がかなり強いことを窺わせる。そうした事象を見ると、選挙対策説を一笑に付すのは難しい。

オートルートA10号線 「この先レーダー取締機あり」の予告標識 パリ環状線