トヨタカローラ宮城アムシス苦竹店。中古車を取り揃え「今すぐクルマが欲しい」という需要に対応する《撮影 土屋篤司》

「新車はいつ入ってくるかわからない状態だが、受注は回復してきている。しばらくは中古車販売と車検整備でスピーディに対応していくことが重要」宮城県仙台市宮城野区にある新車ディーラー、トヨタカローラ宮城アムシス苦竹店の高橋浩店長は語る。


◆「今すぐ欲しい」の声に対応するために

アムシス苦竹店がある国道45号線沿いは、宮城野区の中でも海岸から6〜7km離れているため、3月11日の大地震による津波の直撃はなかった。しかし地震そのものによる爪あとは今も深く残る。軒を連ねる家電量販店やスーパー、自動車ディーラーなど、大型の建物ほど被害が大きかった。4月に入り復旧のめどがついた矢先の4月7日、宮城県沖地震が発生。県内で最大震度6強を観測したこの地震により、「振り出しに戻ってしまった」(高橋店長)。

アムシス苦竹店も3月の地震で新車のショールームが損傷、水や電力の供給もままならぬ中、営業再開するまで約2週間かかった。4月の地震でも停電はあったが何とか営業を続けた。現在は事務所スペースを仮の商談スペースとして営業をおこなっている。こうして復旧作業に追われる中も営業部隊の携帯電話は鳴りっぱなしだったという。

営業再開直後から最も多かったのが「『とにかく今すぐクルマがほしい』という要望だった」と高橋店長は語る。「移動手段としてだけではなく、家の替わりとしてクルマを欲しがる方も居た。震災から約3週間、ガソリンがない状況でも、値段、車種問わず購入希望があった」(高橋店長)

しかし、出荷待ちの新車を保管する仙台新港のモータープールを津波が直撃したことで、トヨタカローラ宮城の扱う新車350台が流された。生産工場の稼働停止や減産なども影響し、新車販売が絶望的となった中で「すぐ乗り出せる」中古車を充実させた。新車とほぼ同数の中古車を販売する大型店舗ならではの強みが発揮された。震災後店舗に残った80台の中古車は2週間で完売した。「整備工場も十分に稼働できていない中、少しでも早くお渡ししたい、というのが我々の思いだった」と高橋店長は当時を振り返る。

その後も通常であれば店頭に並ばない低年式車や他メーカー車なども積極的に取り寄せ、ようやく約20台を確保した。カローラ宮城系列店は24店舗ある中で、全店舗合わせても在庫車は100台程度という状況。近隣の新車ディーラーも同様に中古車販売に力を注いでいる。ようやく需要は落ち着きを見せ始めたが、「まだまだ足りない」と高橋店長は語る。


◆受注は正常化へ、ハイブリッドがカギとなる

同店の新車月販台数は平均60台。本来ならば新年度、大型連休前と需要が高まる時期にもかかわらず「前年比の2割程度」(高橋店長)となった。他地域の新車ディーラーから商品を回してもらうなどルートの構築に務めているが、5月7日現在で新車の在庫は全くない状態という。

「同じ宮城県内でも、津波被害を受けた地域とそれ以外の地域とでは、お客様の感覚に多少の温度差がある。津波被害のなかった地域のお客様からは納期についての催促やご相談が多いが、ひとりひとりに現状を説明し、何とかご了承を頂いている。クルマをお渡しできないという状況がもどかしい」と頭を悩ませる。

とはいえ、受注そのものは例年並みに回復してきているという。全国で既に2万5000台の事前受注があったという『プリウスα』についても「受注自体は順調」とした。「『プリウス』が出た際、宮城県は全国でも早くにハイブリッド補助金を打ち出したこともあり、ハイブリッドは人気。プリウスαにも期待している」と語る。

震災によるガソリン需要の高まりは、燃費の良いハイブリッドの価値を高めた。近隣の中古車販売店でも、「プリウスは入荷するとすぐに売れる。ハイブリッド車はオークション価格も高騰している」という声を聞いた。佐藤店長からも、「プリウスのオーナーさんからは『プリウスで助かった』という声が多く寄せられた。また100Vコンセントのある『エスティマハイブリッド』など数台を支援車両として災害対策本部に提供し、喜んで頂けた。ハイブリッドの価値を多くの方に実感して頂けた」と同様の言葉が繰り返され、ハイブリッドが今後の販売を牽引する可能性が挙げられた。


◆車検対応のためGW中も営業

中古車販売と並び当面の柱となるのが整備や車検だ。電力や水道も復旧した現在、整備についてはほぼ通常通りの稼働となっている。再開後は特に車検の対応に追われているという。国交省は今回の震災を受け、被災した東北地方で震災後に車検の期限を迎える車に対し、有効期限を延長する措置をとった。宮城県全域については5月11日がこの期限となったため、同社は全店でゴールデンウィーク中も営業し、これに対応した。

また、持ち込まれる車両の中には、津波による冠水車両も多い。アムシス苦竹店の店舗裏にある車両保管所には今も多くの冠水車両が置かれている。しかし、修理可能なものは100台中2〜3台程度しかないという。海水に含まれる塩分により、金属部分が腐食するだけでなく、電力系統に影響を及ぼしてしまうためだという。

「短期的に見れば修理が不可能なわけではない。ただ修理費用が高額になってしまうというだけでなく、その後ちゃんと走るという保証ができない。通常の車両保険も効かないため、廃車をおすすめし手続きをご案内している」(高橋店長)


5月中旬にはようやくショールームのガラスが調達できそうだという。同店はトヨタカローラ宮城の本社機能を持つ県内最大級の店舗でもあり、他店舗の復興のためにも「まずは本社が立ち直らなければ」と意気込む。

高橋店長は、「整備や車検についてはできるだけスピーディに、ニーズに応えていく。新車販売についても、出遅れてしまうのは仕方がない。だからといって受注を止めるわけにはいかない。お客様が第一の商売。ご理解を頂きながら一人でも多くの声に応えていかなければ」と語った。

トヨタカローラ宮城アムシス苦竹店《撮影 宮崎壮人》 トヨタカローラ宮城アムシス苦竹店《撮影 土屋篤司》 地震により損傷した新車ショールーム《撮影 土屋篤司》 地震により損傷した新車ショールーム《撮影 土屋篤司》 地震により損傷した新車ショールーム《撮影 宮崎壮人》 地震により損傷した新車ショールーム《撮影 宮崎壮人》 地震により損傷した新車ショールーム《撮影 土屋篤司》 トヨタカローラ宮城アムシス苦竹店《撮影 土屋篤司》 事務所を仮の商談スペースとして営業再開した《撮影 宮崎壮人》 営業所の裏手には被災車両が保管されている《撮影 宮崎壮人》 わずかに入荷した新車《撮影 宮崎壮人》 冠水車両。水の跡がくっきりと残る《撮影 土屋篤司》 国道45号線沿いには自動車ディーラーが軒を連ねる《撮影 土屋篤司》 近隣の日産ディーラーは駐車場にプレハブの仮営業所を建て営業する《撮影 土屋篤司》 近隣の日産ディーラーは駐車場にプレハブの仮営業所を建て営業する《撮影 土屋篤司》 仙台新港にあるトヨタのモータープール《撮影 宮崎壮人》 仙台新港にあるトヨタのモータープール《撮影 宮崎壮人》 仙台新港にあるトヨタのモータープール《撮影 宮崎壮人》 津波の被害を受けたトヨタのモータープール《撮影 石田真一》 津波の被害を受けたトヨタのモータープール《撮影 石田真一》 津波の被害を受けたトヨタのモータープール《撮影 石田真一》 津波の被害を受けたトヨタのモータープール《撮影 三浦和也》 津波の被害を受けたトヨタのモータープール《撮影 三浦和也》 津波の被害を受けたトヨタのモータープール《撮影 三浦和也》 津波の被害を受けたトヨタのモータープール《撮影 三浦和也》 被災した新車《撮影 三浦和也》 仙台新港《撮影 三浦和也》 仙台新港《撮影 土屋篤司》 仙台新港《撮影 土屋篤司》