三井住友海上火災保険 自動車保険部 営推チーム 阪口健太氏《撮影 北島友和》

ドライブレコーダーといえば、タクシーやバスなど業務車両向けの車載機器という印象が強いが、このところ1万円前後の安価な車載器が登場し、GPSログやレーダー機能など高機能化も進み、個人での利用でも増えている。また、スマートフォンのカメラを活用したドライブレコーダーアプリも登場し、利用の敷居は低くなってきた。

大手損害保険会社の三井住友海上火災保険(以下三井住友海上)は、2010年の7月より「運転ドック」という名称でドライブレコーダーを活用した運転診断サービスをスタートした。三井住友海上は独自仕様のドライブレコーダーを代理店に販売、代理店は顧客に向けてドライブレーコーダーで記録した映像や加速度センサーなどの記録から運転診断をおこなう、というものだ。他の保険会社には見られないユニークな取り組みを始めてまもなく10カ月が経つが、導入の経緯と狙い、そして顧客や代理店の反応について、リリース時から同サービスを担当している自動車保険部営推チームの阪口健太氏に話を聞いた。


◆CR強化のツールとして運転ドックを活用

今回のドライブレコーダーによる運転診断サービスを始める以前から、運転ドックという名称は業者向けのサービスとして展開していたものだったという。それを個人客向けにリニューアルしたのは、「当社の代理店様がお客様に対して、ドライブレコーダーを活用した安全運転診断サービスが手軽に利用していただくことで、カスタマーリレーション(CR)を強化することがまず狙いにあった」と阪口氏は説明する。

また、運転診断サービスについては「お客様からも、“手軽にできるのであれば、運転診断は是非やってほしい”という意見もあり、当社としても運転ドックで事故を減らす啓発ができれば、要望に応えることもできる」と考えたという。およそ2年の構想期間を経て、2010年夏よりサービスをスタートした。

この運転ドックは三井住友海上の3万店以上におよぶ代理店のうち、およそ700店で1200台を導入しているという。導入した代理店スタッフの中には、診断ソフトをインストールしたPCを常に携行し、いつでも顧客に提案できるよう準備している人もいるという。

運転ドックに使用するドライブレコーダーは三井住友海上が仕様を定めたもので、映像記録とともに、加速度センサーによる急加速や急停止、急ハンドルなどの記録をSDカードに記録する。ドライブレコーダーをダッシュボードに取り付けて30分程度公道を走れば診断が可能だ。


◆詳細な運転診断で安全運転を意識づけ

運転診断は、「加速の安定性」「減速の安定性」「コーナリングの安定性」「ハンドル操作の安定性」「ECO傾向度(走行時の加減速の安定性)」の5項目とこれらの総合評価で示される。AからCの3段階評価や点数だけでなく、「注意すべき事故形態」やそれぞれの項目の寸評も表示されるという詳細なものだ。この運転診断のソフトウェアは機能の一部に新しいものが含まれているということ現在特許出願中とのこと。

また、「運転中の気になるデータ検出箇所」として急加速・急減速・急ハンドルを記録した部分をそれぞれ2箇所抽出し、ソフト上で再生させる機能もある。ヒヤリハットになりそうな箇所を抽出して見せることで、リアリティを持って安全運転を意識づけできるというわけだ。

この運転ドックを展開するにあたり、事前に数百人の運転記録データを集計して、運転診断結果の妥当性を高めるようにしたという。


◆代理店からも好評

運転ドック導入後、代理店の反応はどうか。「一部の代理店様には10台20台単位のロットで揃えていただき、営業スタッフに持たせ顧客に運転ドックを試していただいているところもある。当社独自のサービスとあって目新しさもあり、いまのところは好評」とのこと。


◆ドライブレコーダーをセットした保険商品や異業種連携は「未定」

ドライブレコーダーと保険の組み合わせでは、安心マネジメントが朝日火災海上保険を引受会社として交通事故傷害保険をドラレコに付与した『あんしんmini』を販売している。三井住友海上がドライブレコーダーとセットにした保険商品や他業種との連携の可能性はないのか。

阪口氏は「現在、当社ではエンドユーザーに対してドライブレコーダーの販売は実施していない。運転ドックは、あくまでも代理店様に“診断用”として使っていただくことを主眼としている」と現状を説明する。

また、ドライブレコーダー設置による保険料の割引適用や車載器メーカーとの連携については、「損害保険会社として、より良い商品・サービスを提供するため、あらゆる可能性を検討していきたいが、現段階では運転ドックを広く普及させることに注力している」と述べる。

今後の見通しはどうか。「現状は、診断用ソフトウェアをPCにインストールするオフラインサービスであり、データは代理店からお客様にサービスを提供することに使用されている。今後もバージョンアップを重ねていき、ゆくゆくはクラウド化を考慮に入れたオンラインサービスなどの提供も検討していきたい。より多くの代理店様やお客様に運転ドックを試していただき、常日頃から安全運転を意識していただければ」と阪口氏は期待を語る。

運転ドックは三井住友海上本体ではなく、同社の代理店がサービスする。すでに契約している代理店、あるいは知り合いの営業スタッフがいたり近くに代理店があるようならその代理店経由で申し込むことが可能だ。また代理店が運転ドックを導入していない場合は、三井住友海上の最寄りの営業支社に問い合わせれば導入済みの代理店を案内してもらえるという。利用者には費用は発生しない。

三井住友海上火災保険 自動車保険部 営推チーム 阪口健太氏《撮影 北島友和》 運転ドックに使用するドライブレコーダー本体《撮影 北島友和》 運転ドックのドライブレコーダー設置イメージ《撮影 北島友和》 診断ソフトウェア《撮影 北島友和》 診断ソフトウェア《撮影 北島友和》 診断ソフトウェア《撮影 北島友和》 診断ソフトウェア《撮影 北島友和》 診断ソフトウェア《撮影 北島友和》 診断結果の出力イメージ。点数だけでなく評価コメントも詳しく記載される《提供 三井住友海上火災保険》 レーダーチャートで項目毎の評価が分かる《提供 三井住友海上火災保険》 ヒヤリハットとなりそうな運転場面を自動判別で6箇所ピックアップする《提供 三井住友海上火災保険》 ヒヤリハットとなりそうな運転場面を自動判別で6箇所ピックアップする《提供 三井住友海上火災保険》 ヒヤリハットとなりそうな運転場面を自動判別で6箇所ピックアップする《提供 三井住友海上火災保険》