吉利汽車 GLEAGLE GS-CC(上海モーターショー11)《撮影 宮崎壮人》

◆70社を超える乗用車メーカーが猛アタック

世界のありとあらゆる車がこの国では買える。上海モーターショーの全会場を巡っての印象だ。無いのは日本の軽自動車とインドなど新興諸国の民族系ブランドくらいである。

2009年に米国を抜いて世界最大の自動車マーケットとなり、今年には新車販売が2000万台に届こうかというこの国に、内外の自動車メーカーが猛アタックしている。乗用車メーカーだけで70社余りが出展する上海モーターショーは、その縮図でもある。だが、会場に充満する熱気は、そう遠くない将来の激しい市場争奪戦がもたらす摩擦熱に変わるのだろうという予感がした。

19日から2日間の報道公開日にプレスコンファレンスを行った乗用車メーカーは74社にのぼった。トラックなど商用車メーカーを合わせると100社近い自動車メーカーがこの会場に集結している。


◆3大メーカーも着実に自社ブランド車

圧倒されるのは中国メーカーの長足の進歩である。たとえば吉利汽車や奇瑞汽車といった民族系を代表する企業。まだ自動車産業に進出して10年ほどの歴史しかないのに、コンパクトカーから上級セダン、SUV、ミニバンといったモデルを網羅し、乗用車のフルラインメーカーとなっていた。

各社ともプラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車など環境対応車についても出品している。吉利のPHV『EC7』は2012年から生産を開始するという。

日本や欧米メーカーとの合弁を事業の柱とする第一汽車、東風汽車、上海汽車の3大メーカーも、着実に自社ブランドの品揃えを充実させていた。これは日本には余り伝えられていない現象だった。

一汽はPHV『奔騰B50』を今年から30台の規模で試験走行させる。技術説明員に、合弁パートナーのトヨタ自動車からの技術が反映されているのかと聞くと「自主技術」と胸を張っていた。とはいえ、これら大手は今後、提携合弁メーカーからの技術習得が大きな財産となっていこう。


◆ひとつの「省」で「1国」分のマーケット

中国汽車工業協会のまとめによると、自動車市場(卸売りベース)は09年に前年比46%、10年に32%と驚異的な伸びを見せたものの、優遇減税の見直しなどにより、今年1〜3月は10%程度の伸びにスローダウンしている。

もっとも「母体が大きくなっているので、伸びは小幅でもボリュームは大きい。ひとつの省の人口が1国に相当するので着実に成長する」(三菱自動車の益子修社長)と見られている。いまや中国は「最も重要なマーケット」(トヨタの豊田章男社長)となった。

だが、世界1の規模で持続的な成長潜在力をもつとはいえ、殺到する国内外メーカーのクルマを広く受け入れ続けるフトコロの深さがどこまで続くのだろうという懸念も湧く。ファミリーカーなどは、どこも似たようなクルマであり、似たようなラインアップなのだ。


◆総合力を鍛えぬく

日本メーカーの首脳は「今後は持ち込めば売れるということはなくなる」と異口同音に指摘する。台頭する中国メーカー、中国進出で先行した欧米メーカー、勢いが止まらない韓国メーカーなどとの激しい市場争奪戦が始まっている。

80年代以降の日本車の世界進出を支えた品質、価格、燃費性能の競争力だけでは最早、優位性は発揮できなくなってきた。豊田社長はプレスコンファレンスで「中国のお客様にご満足いただけるよう、クルマを鍛えぬきたい」と話した。

もちろん、鍛えぬくのはクルマの基本性能にとどまらず、デザインやブランド力、サービス品質といった総合力ということだ。熱狂する市場での総力戦が始まっている。

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