VW シャラン

乗り込んでシートに腰を下ろすだけで、このクルマのキャラクターが伝わってくる。国産の大型ミニバンのようにヨイショとシートに登る感じはなく、腰を水平移動するような感覚。着座姿勢もあまりアップライトではなく、乗用車的にゆったり座れる。

7人乗りの大柄なミニバンとはいえ、『シャラン』はRVではなく「移動の道具」なのだ。車中泊など想定外。だから2〜3列目もフルフラットにはならない。

独立した3つのシートが並ぶ2列目はスライドとリクライニングを備えるが、その調整幅は国産ミニバンより小さい。万一のときにシートベルトが有効に働く範囲にとどめたからだ。豪華なシートに寝そべるのは、道具としての正しい使い方ではないとVWは言いたいのだろう。

全高は1750mm。ドイツのVWのHPでルーフレールのない仕様の全高を調べたら1720mmだった。これはアルファードより170mmも、昨年のモデルチェンジで約10cmも低くなったエルグランドと比べても85〜95mm低い。もちろん頭上には普通の乗用車より広いクリアランスを確保しているが、「移動の道具」として無駄のない全高だ。

そのおかげで、カウルをあまり前進させずにすんだ。背が高くなるほどカウルを前に出すのがプロポーションの原則。しかしそうするとインパネ上面に無駄な空間が生まれるし、Aピラーが運転視界の邪魔になる。シャランは外観のプロポーションにも「移動の道具」のキャラクターを表現しているのである。

ちなみに日産『エルグランド』が全高を下げた一因は、北米向け姉妹車の『クエスト』とボディの基本骨格を共通化したから。国産大型ミニバンはもともと日本独特1BOXバンから発展してきたカテゴリーで、日本の自動車市場の「ガラパゴス化」を象徴する存在と言われるが、エルグランドをはじめとする国産ミニバンも軒並み低全高化して「海外の風」を持ち込んだ。これはシャランにとって追い風だ。

国産大型ミニバンの中心価格帯は350万〜400万円。シャランのコンフォートラインは379万円だから価格競争力もある。日本のミニバン市場の「脱ガラパゴス」に、これが一役買ってくれることを期待したい。

パッケージング:★★★?★★
インテリア/居住性:★★★★
?パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

千葉匠|デザインジャーナリスト/AJAJ理事
デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て 88年末よりフリー。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。

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