東京電力の武藤栄副社長は28日夕の会見で、福島第一原発の廃炉について、どのような考えを持っているのかという質問に、こう答えた。

「ともかく足下でやらきゃいけないことがたくさんあるので、この発電所の将来をうんぬんする時期ではない」

会見で廃炉の可能性を問われたのは2回目。その度に武藤氏はまるで不肖の息子をかばうように、まだ廃炉を考える時期ではないと、判断を先送りしている。

29日の参議院予算委員会でも菅直人首相が、同じことを聞かれている。「最終的には一定の安定状況になった後に専門家の意見を聴いて決めることになるが、その可能性は高い」。首相の発言に、新聞には「福島第一原発、廃炉へ」という文字が躍った。

絶対安全なはずの原発が、想定し得なかった20km圏避難指示の発動や、放射性物質を含んだ汚染水の外部流出、プルトニウムの検出まで取り沙汰される現状では、国民感情からすれば廃炉は当然のように思える。

なぜ廃炉を決断できないのか。そもそも廃炉は誰が決めるのか。

原子炉を所有するのは原子炉事業者、福島第一原発であれば東京電力だ。その建設は原子炉等規制法に縛られ、新設や増設をする場合には申請し、認可されたものだけを作ることができる。廃炉も同じだ。

「結論に至る課程は別として、廃炉の最終判断は所有者である原子炉事業者が行う。その場合は廃炉認可の申請を保安院に出すことになっている」(原子力安全・保安院)。廃炉の場合は認可が下りれば、どんな壊し方で、いつ実施しても問題はない。

福島老朽原発を考える会では「早期に廃炉を表明することで、福島第二をどうするなど、ほかの原発に影響が拡がることを怖れているのではないか」と、話す。

第二原発の再稼働を東電が福島県に打診をしたという新聞報道も浮上した。このことは福島県も東電もそうしたやり取りのあったことを正式には認めていないが、東電側に損傷の軽い第二原発の早期稼動で電力供給力の低下を補いたいという空気がないわけではない。

東電の売上高は連結ベースで5兆0162億円、経常利益2043億円(10年3月期)だった。1号機から6号機まである福島第一の建設費の総額は約5020億円。日本中に与える影響と、施設のダメージを考えれば、福島第一原発の廃炉は自明なのだが、それを口にできない事情が東電にはある。