サービスマネジメントグループの本田健司氏

RBB TODAYとレスポンス編集部の共同企画として開催された「モバイルアワード 2010」の「ナビアプリ」部門で第1位を獲得したユビークリンクの「全力案内!ナビ」。「NAVITIME」や「いつもNAVI」といった強力なナビアプリを押しのけて見事栄冠を勝ち取った。

また「アプリ価格」(iPhone版の場合はアプリ本体で900円)や「つかいやすさ」といった項目でも高い評価を得るなど、全力案内!は“スマートフォンでナビをする”時にはまず筆頭候補に挙げられる存在となっている。


今回のユーザー評価をユビークリンクではどう分析しているのか。また今後の開発方針も合わせてサービスマネジメントグループの本田健司氏に話を聞いた。


◆利用者の声に耳を傾け、いかに早く問題点の修正や機能追加として反映させるか

----:ユビークリンクは『全力案内!ナビ』で他社に先駆けてiPhoneアプリに取り組んで来ましたね。その後、ナビゲーションアプリでも上位の常連をキープし続けています。

本田:iPhone アプリを早くからやっていたからこの結果を残すことができた、というわけでは決してありません。利用者の声に耳を傾けて、問題点の修正や機能追加をできるだけ短いスパンで提供していくことが利用者の評価を高め、さらにこうしたクチコミがまた新たなユーザーを引き寄せることにつながったのだと思います。

----:全力案内!ナビは、まだアップルがリアルタイムナビゲーションを解禁していなかった時にまず無料版を出し、ナビ機能が解禁されたとほぼ同時に有料版のリアルタイムナビアプリをリリースしました。当時はナビ機能が解禁されるかどうかもグレーでしたし、アップル自身が純正なナビを出すという噂もありましたが。敢えてそれでもiPhoneでナビアプリに取り組んで理由は。

本田:携帯電話(フィーチャーフォン)向けにサービスをしていた時から、当社はプローブ交通情報(UTIS:ユビークリンク交通情報)を売りにしておりまして、「このプローブを無料でも良いからまずはキチンとアピールしていこう」という共通認識が社内にはありました。

----:全く新しいプラットフォームでアプリを開発しても、リスクもあったのでは。

本田:もちろんアプリ開発に相応のコストはかかりますが、当社の場合(野村総研グループの)センターサーバーのインフラがありますので、バックエンド側での大規模な開発が必要だったりクラウドサービスを運用するコストが上昇したりすることはありません。


◆カーナビをシンプルに使いやすくするためにはiPhone流のUI設計が重要だった

----:初期のアプリベンダーというと、アップルのファンや支持者が中心だったと思うのですが、御社の場合はおそらく仕事場でMacを使っている人はいなかったのではないでしょうか? そういう環境にありながら UI面でiPhoneのスタンダードに合わせたナビアプリをいち早くリリースしてきたことには驚きました。

本田:結論から言えば、iPhoneのUIありきと言うよりも、いかにシンプルで使いやすいナビを提供するか、というテーマがありました。フィーチャーフォンでのナビアプリは当社も含めて出していましたが、正直申し上げてあまり使いやすいと思ったことがなかったのです(笑)。ボタンで操作せねばならず、タッチパネルで使える車載ナビと比べるとどうしても操作が難しい。

----:iPhone版の全力案内!を作るにあたっては、カーナビを意識した、と。

本田:メニュー構成などはカーナビをベースにしましたが、やはり念頭にあったのは“使いやすさ”です。直感的に使えるものを作るとなると、やはりiPhoneベースのUIに沿うべきだろうと。逆にフィーチャーフォンは意識していません。乗換案内などは載せず、カーナビとしての機能に絞っています。


◆機能分離・オプション化はニーズへの対応

----:2010年の5月には、プローブやナビ機能を充実させたオプションを別課金とするなど、これまで単一だったアプリの価格と仕様を見直しましたが、この意図は。

本田:UTISを分離したのはそれほど大きなことではないと思っています。この時点で全力案内!ナビの名前もApp Storeではそれなりに認知されてきました。で、次に何をすべきかを考えると、アプリ内課金を使って利用者のニーズに応じた機能を提供すべきだろうと。App Storeの場合月額での課金はできませんし、クレジット番号を入力してもらう、というのも馴染まないでしょう。

----:日本の市場として受け入れられる課金体系はなにか、ということですね。

本田:VICSも用意する、交差点拡大表示などのアドバンストオプションも入れるなど、豊富なオプションを用意したことがお客様の評価につながったのかな、と考えています。

----:オプションの購入傾向はどうですか。

本田:プローブのUTISはもちろんですが、VICSのニーズもかなりあることが分かりました。VICSとプローブでそれぞれ別オプションとして提供していますが、分けて買うよりは一緒に買うというケースが非常に多いです。渋滞情報が欲しい、という人はあまり出費を気にしない傾向があるようです。逆に渋滞情報はいらない、たまに道案内するだけの用途であれば、アプリ単体で十分です。その分、価格も安いですし。

----:Android版はiPhone版とは異なった料金体系ですが。

本田:Androidでは仕組み上アプリ内課金ができませんので、標準のナビ機能とUTISとの組み合わせが基本になっています。


◆iPhoneの可能性はまだまだ伸びる

----:iPhoneの販売台数は急速に伸び、アプリの需要も伸びていると思いますが、一方で他社もどんどん参入して競争も激しくなっています。今後、このプラットフォームに対してどのように取り組んでいくお考えですか。

本田:iPhoneの可能性はまだまだあると考えています。アップルは毎年のように新しい端末や技術を出してきますのでマーケットが常に活性化されています。2010年にもiPadというタブレットが登場しましたが、いち早くこれに対応しました。現状はApp Storeで高い評価をいただいていますが、かといって楽観はできません。新しいベンダーもつぎつぎに登場するでしょうし、現状の地位に甘えていれば足もとをすくわれかねませんから。

----:アップルはアプリベンダーに対する規制や管理も厳しいですが。開発の妨げになることはありませんか。

本田:アップルは、公平なマーケットを維持するだとか、ユーザーの使い勝手に毀損を与えないためのルールを行き渡らせる、というのが基本的な立場です。そのルールを理解して開発を進めていけば、大きな問題にはなりません。アップルの作ったガイドラインに従って設計していくと逆に良いものができることもしばしばあります。

----:御しにくいと思われていたプラットフォームを逆に強みに変えたところにいまの全力案内!ナビの支持があるのかもしれません。では急速に広がりを見せているAndroidはいかがお考えでしょう。

本田:2010年の夏にAndroid版の全力案内!ナビをリリースしましたが、おかげさまで好調です。テクノロジーやUIのヴィジョンを先取りして見せてくれるAppleに対して、Androidはオープンなプラットフォームというとで、iPhoneでは実現できないアイディアを展開していける魅力を活かせれば、面白いですね。

----:Windows Phone(Windows Mobile)はいかがでしょう。先頃改めて無料のβ版をリリースしましたが。

本田: Windows Phoneはマイクロソフトがマーケットの部分をかなり力を入れて整備したので、期待はできると思います。注視して取り組んで行きます。世の中の流れがAndroidに偏重している感もあるので、逆張りしてWindows Phoneで面白いことをやるというのも手かも知れませんね(笑)。

----:アプリで今後さらに強化していきたい機能はありますか。

本田:検索とPC連携は強化していかなければいけない機能だと考えています。


◆モバイルアワードの第1位はユーザーとのコミュニケーションを最重要視した結果

----:当社が実施したナビアプリ満足度調査(モバイルアワード)では、全力案内!ナビが総合1位、さらに部門別でも自車位置精度とアプリ価格面の面で高い評価を受け、1位になりました。競合社が多いこの分野でユーザーからの高い評価を得たことについて、どのように感じていますか。

本田:iPhone版全力案内!ナビのアプリ価格については、いろいろ意見があったのですが、最終的には(増田有孝)社長の決断で1000円以下で提供しよう、というのはありました。やはりインパクトは大事だと言うことで、攻めの姿勢を見せたのです。総合的な満足度で高い評価をいただけたのは、ユーザーとのコミュニケーションを最重要視してきた結果と考えています。お客様の声をきちんと把握して、バージョンアップというカタチで反映させるということを継続してきたことが大きいですね。

----:スマートフォンを使う人の気持ちとユビークリンクの姿勢とが合致した、と。また、全力案内!では、例えばスキー場の情報提供やトヨタの「スマートG-BOOK」への初採用、そして先頃発表された「コロプラ」プラットフォームの採用表明など、異業種他社とのコラボレーションにも積極的ですね。

本田:当社はナビゲーションやプローブを中心にビジネスしている企業ですが、他社とコラボすることで、当社の強み・特徴を活かすことができると考えています。トヨタ自動車のような大きな企業と組んでいくというのは、当社のアプリの品質・信頼性を訴求するという意味でも影響が大きいですね。こうした業務提携は今後も積極的にやっていきたいですね。デメリットは何もありませんから。

----:今後のバージョンアップの予定は。

本田:1月の末から2月の頭をメドに新しいバージョンをリリースできるよう準備しています。お客様から要望の多かった機能を新たに盛り込んでいます。ご期待ください。

《聞き手 三浦和也》

ナビ中の画面。オプションなしでは、交差点などにさしかかっても画面の変化はなくこのまま。しかし十分に実用的だ。 iPhoneでアプリを起動し「My地点との同期」をタップするとパソコンで登録した地点が反映される。非常にスピーディだ。 交差点の拡大図が表示されたところ。PNDなどのナビ専用機に近い操作感となる。 青い点線がすき道、オレンジの点線が混雑している道路、赤い点線が渋滞している道路。 走行軌跡は自動的に保存され、このように呼び出して画面上で走行させることができる。なかなかユニークな機能だ。 走行軌跡はkmzファイルとしてメールに添付することができる。パソコンで受信すれば、Googleアースに走行軌跡を表示することなどが可能だ。 サービスマネジメントグループの本田健司氏 全力案内!ナビのプレイリスト設定画面 iPad内のプレイリスト一覧 アイコン     iPad向け全力案内!ナビの画面イメージ サービスマネジメントグループの本田健司氏 サービスマネジメントグループの本田健司氏