3008

●混血娘の魅力

シトロエン『3008』が日本に導入された。『308』と『308SW』との間に入るサイズのプジョー初のクロスオーバーSUVで、全長4365mm×全幅1835mm×全高1635mm。ターボ付きの直噴1.6リットル直4エンジンは156馬力を発揮し6速ATと組み合わされる。車両価額は339万〜385万円。

BMWグループとの共同開発によるエンジン、アイシン精機製のAT、そしてヤマハ発動機が特許を持つダイナミックロールコントロールの採用など、諸外国の技術を積極的に取り入れている。プジョー独特のネコ足と呼ばれるサスペンションと、実績のある最新技術がアピールポイント。

新参者3008も定番の顔でプジョーをアピールしているが、表情がやさしくなった。SUVらしさは、ステンレス製のアンダーガード、機能的なバンパー、そして張り出したホイールアーチなど。しかし、上品なフロントグリルや丸みを帯びたモノフォルムデザインにより、ミニバンのようにも見える。

ミニバンルックは、見せ掛けではない。広々としたインテリアは、巨大なガラスサンルーフが用意されるなど、クルーザーのコクピットに収まったような空間を演出している。場所を選ばないリッチなデザインと工夫された装備の3008は、あらゆる場面で使える(=マルチパーパス)ニュータイプのSUVと言える。

●デザインを大切にするお国柄

プジョーブランドは、2010年に200周年を迎えた。新しいことに挑戦すると同時に、伝統を大切にする証として昔手がけていた自転車や胡椒挽きを今でも作っているユニークなカーメーカーだ。現在は、同じフランスのシトロエンとSPAプジョーシトロエン・グループを構成している。

プジョーの魅力は、モータースポーツで鍛えられた滑らかなサスペンションだが、デザインも捨て難い。1960年以降デザインコンサルタントとなったイタリアのカロッツエリア、ピニンファリーナは、『204』、『205』、『504』、そして『505』などの名車を生み出した。しかし、これらのクルマを知るのは年配の人に限られる。

現在のプジョーイメージは、1998年パリサロンでデビューした、205の後継『206』から始まる。上品なデザインから自社デザインのアグレッシブなデザインへの大転換は大ヒットとなり、ピニンファリーナのデザインからの脱却を果した。

しかし、ピニンファリーナとの長い蜜月関係で培ったデザイン重視の考え方は健在のようで、フランスらしいデコラティブなデザインで異彩を放っている。余談だが、イタリアの血からフランスの血に変わってアグレッシブなデザインに変身したとしたら、フランス娘も見掛けによらず血が熱いようだ。

●増殖するクロスオーバーSUV

セダン、ハッチバック、そしてクーペなどの言葉は使い慣れているので、何の疑問も無く使っている。しかし、セダンの語源が17世紀頃の貴婦人の乗り物であるセダンチェアだと知ると、奇妙に感じながらも納得させられる。セダンチェアは、腰掛の形をしたカゴで、ムーズ川に面したフランス北東部アルデンヌ県の都市スダン(Sedan)で作られていた。

最近のクルマでは、ミニバン、SUV、そしてクロスオーバーSUVなど、新しい呼称が急に増えてきた。ミニバンはアメリカで生まれた呼称だが、日本のカーメーカーが3列シートで7〜8人乗れる箱型のクルマをアメリカに輸出したことをきっかけでブームとなったと言われる。

SUV(スポーツユーティリティビークル)も、アメリカで日常の足として使っていたトラックの荷台に屋根や窓をつけたのが始まりで、これもアメリカ生まれの呼称。その後SUVがブームとなり、高級化するに従って4ドア仕様や豪華な内外装の仕様へと変化しながら、クロスオーバーSUVの誕生へとつながった。

アメリカではトラックのカテゴリーのSUVに対して、主に乗用車のシャシーを使うクロスオーバーSUVは乗用車に入る。急速に拡大している新マーケットにヨーロッパのカーメーカーも注目し、3008誕生ともなった。

筆者:松井孝晏(まつい・たかやす)---デザインジャーナリスト。元日産自動車。「ケンメリ」、「ジャパン」など『スカイライン』のデザインや、社会現象となった『Be-1』、2代目『マーチ』のプロデュースを担当した。東京造形大学教授を経てSTUDIO MATSUI主宰。著作に【D視点】連載を1冊にまとめた『2007【D視点】2003 カーデザインの視点』。

3008 3008 3008 3008 3008 3008 3008 3008 3008 ペッパーミル。パリ、シャンゼリゼのショールーム 200年の歴史のディスプレイ。パリモーターショー10 3008 3008 3008 3008 3008 3008 3008 3008 3008