C3

●フランス生まれのカブトムシ

2002年以来、8年ぶりにフルモデルチェンジされた2代目シトロエン『C3』。ボディサイズは、全長3955mm×全幅1730mm×全高1530mm。全長が105mm、全幅が60mm拡大され、同じ市場セグメントの他のコンパクトカーと競争可能な大きさになった。

BMWグループとの共同開発による1.6リットル直4気筒DOHCエンジンは120馬力を発し、4速ATと組み合わされる。数値的には際立ったところは無いものの、欧州生れらしいしゃきっとしたドライブフィールを期待させる。ベーシックモデルと上級モデルとの2タイプが用意され、車両価額は209-239万円。

2007年東京モーターショーでは、浮世離れした『Cカクタス』が注意を引いた。このCカクタスを髣髴させるフロントビューに、新デザインの「ダブルシェブロン」エンブレムも付いたシトロエンの顔と、もこもこしたボディとが相まって、「カブトムシ」のように見える。

もう一つの特徴は、ウィンドシールド上端を大幅に後退させて、想像を超えた広さで景色を取り込んだインテリア。カブトムシのようなクルマで、自然を感じながら街中をヨチヨチ走り回ったら微笑を誘いそうだ。またクロームを多用した豪華さは、Bセグメントのラグジュアリーカーのはしりとしても注目される。

●禿げを自慢したい

少し前のフランス車は、ウイットに富んだデザインはもちろんのこと、走りなどの性能についても、独自の主張をしていた。しかし、世界のあらゆる事柄のグローバル化に伴って、ドライビング性能も、急速にドイツ車に近づいている。技術は、数値データなどにより客観化し易いので、流れを止めるのは簡単ではなさそうだ。

反面、個々人の好みに左右されるデザインにつては、より個性化されている。フランスの街には、デコラディブなデザインが溢れており、住宅の室内についても同様の傾向にある。クルマの室内につても例外ではなく、このことがフランス車の個性ともなっている。

特にC3の室内は、フランスの住宅に多く存在するサンルームのクルマ版と言える。高窓から太陽光が燦燦と降り注ぐ室内を、クルマのインテリアに再現してしまう創造力には脱帽したい。当然ながら、シートもふっくらとして寛ぎ易い。

C3のようにフロントウインドウの上端が強烈に後退しているのは、額が禿げ上がって悩んでいる人には皮肉に映るかもしれない。しかし、その意外な良さに気付いて自分の禿にも自信が湧けば、C3の想わぬ効果でもあろう。

●理想のメッチェン

欧州は小国がひしめき合っている地域であり、近隣憎悪ということで、隣国のことを良く言う人は少ない。しかし、イタリアやフランスがデザインの国であることに異論を挟む人は少ない。

世界の自動車販売競争において劣勢に立たされたこれらの国が、存亡をかけてデザイン重視に走ったとしても納得がいく。機能的なデザインのドイツ車も良いが、デザインの遊び心に溢れたクルマも、多くの人に希望と喜びを与えるので、今後の発展を期待したい。

デザインの得意な国と言っても、イタリアとフランスでは、デザインテイストに違いがある。シャープで切れの良いイタリアのデザインと、デコラティブでウイットに富んだフランスのデザインと、それぞれ独自性を保っている。

デザインの違いは、足が長くて活発なイタリア娘と、腰をくねらせたメランコリーなフランス娘とを比べても良い。お互いに自国の娘を理想としてデザインをしているとすれば、微笑ましくもある。逆にウイットに富んだデザインのフランス車から推測すると、フランス娘との会話はウイットに富んでいて楽しそうだ。

筆者:松井孝晏(まつい・たかやす)---デザインジャーナリスト。元日産自動車。「ケンメリ」、「ジャパン」など『スカイライン』のデザインや、社会現象となった『Be-1』、2代目『マーチ』のプロデュースを担当した。東京造形大学教授を経てSTUDIO MATSUI主宰。

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