家電量販店ダーティの名物配送車カングー。リブレゾン枠に駐車中

●過酷なパリの駐車場事情、スペース増の秘策とは?

パリ市では12月1日から、夜間駐車スペースが一気に7000台増えた。詳しく話そう。

パリ市内の路肩には、「Livraison」(リブレゾン)と書かれた荷積み・荷降ろし専用駐車スペースが設けられている。作業中のみ駐車できるそのスペースを、平日夜20時から朝7時までと、日曜祝日に一般車にも開放したのである。

開放されたのは、パリ市内にある9000か所を超えるリブレゾン駐車場のうち、約7000か所である。パン店や「シュパレット」といわれるコンビニなどの前にあるリブレゾン駐車場は、開放から除外された。

今回パリ市が実施に踏み切ったのは、2009年に実証実験を約千のスペースで行ない、効果が明らかになったためだ。許可時間外に駐車していた場合の反則金は35ユーロ(約3800円)である。

パリの駐車場事情は過酷だ。セーヌ右岸16区在住のある会社員は、次のように話す。
「都市の中心部ほど、新しい建物が少ない。つまり地下駐車場を備えた住居が少なくなる。したがって、駐車場価格は高くなってしまう」。

彼の住む周辺の地下駐車場は、月額90ユーロ(約9900円)から120ユーロ(約1万3000円)だ。東京の相場からすれば安めだが、空き物件は極めて少ない。さらに自宅近くのものを探すのには、それなりの時間がかかる。

彼の家の場合、休日用の車は借りた地下駐車場に保管し、日常使う家族車シトロエンを路上駐車している。路上駐車は市民の場合、月曜から金曜までは1日0.65ユーロ(約71円)で可能だ。しかし、安いだけにスペース争奪戦は過酷だ。

加えて、パリのドラノエ市長は脱マイカーの都市づくりを推進している。2007年に導入した自転車シェアリング「ヴェリブ」の成功をばねに、2011年には先に実施しているリヨン市を手本に、いよいよカーシェアリング「オートリブ」も導入する。そのいっぽうで、ヴェリブ駐輪場増設などのために、パリの自動車駐車スペースは5%少なくなった。

そうしたなかで「路上駐車スペース探しは年々難しくなるばかり」と、会社員は証言する。パリの多くのドライバーにとっては、今回のリブレゾン駐車場開放は、当局によるささやかな“お目こぼし”にしか映らないようだ。

ちなみにパリ名物といえば、なかば強引ともいえる縦列駐車である。一見不可能とも思える前後の車の間にぐいぐいと割り込んでゆく。その度合いは、前述のように駐車スペース争奪戦が過酷になると、自然と増すだろう。近年のボディ同色バンパーは、すぐに擦過痕だらけとなる。最安グレードからも消えて久しい欧州車の黒バンパーを、せめてパリ地域限定で復活させてはどうか? と余計な心配をする筆者である。

筆者:大矢アキオ(Akio Lorenzo OYA)---コラムニスト。国立音楽大学卒。二玄社『SUPER CG』記者を経て、96年からシエナ在住。イタリアに対するユニークな視点と親しみやすい筆致に、老若男女犬猫問わずファンがいる。NHK『ラジオ深夜便』のレポーターをはじめ、ラジオ・テレビでも活躍中。主な著書に『カンティーナを巡る冒険旅行』、『幸せのイタリア料理!』(以上光人社)、『Hotするイタリア』(二玄社)、訳書に『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)がある。

リブレゾン枠に駐車中のパリ市役所のカングー 窮余の一策。曲がり角のシトロエンC15 ルノー・アヴァンタイム。大柄ゆえ、駐車スペース発見の喜びが想像できる 全長の短い車に乗るのが勝ち? スマートとトヨタiQ ヴェリブ専用駐輪場 こんなにくっついたり… こんなふうになってたり…