バブル(ボローニャモーターショー10)

●『小貴族』がイタリア発売のためにしたこと

イタリアのマルティン・モータース社は、12月4日から12日まで一般公開されたボローニャモーターショーで、小型車『バブル』を欧州初公開した。

バブルは中国・双環汽車製のスモールカーがベース。トヨタ『iQ』より短い全長3270mmでありながら、4名乗車できることが最大のセールスポイントである。価格は1万1400ユーロから。

「双環汽車」「スモールカー」と聞いて、ピンときたあなたは、かなりの中国車通だ。 バブルのベースは2007年1月に発表され、スタイルや内装がスマート『フォーツー』に酷似していたことから大騒ぎとなった『小貴族』というモデルである。

当時この4人乗り“なんちゃってスマート”を知った筆者は、ドラえもんの主題歌のごとく「こんなクルマいいな、できたらいいな」と思っていたら本当に登場してしまったので、思わず笑いがこみあげたのを覚えている。

しかし、現実はお笑いでは済まなかった。2007年12月、ボローニャ・モーターショーに出品すべく持ち込まれたものの、ダイムラーがスマートの意匠権侵害を訴えたことから、プレイスデイ当日撤去という異例の事態となった。

ちなみに双環は、SUV『CEO』の外観がBMW『X5』と極めて似ていたことでも、同年先にドイツの地裁に訴えられていた。

なぜ今回ボローニャで復活できたのか?それは、先に中国・力帆汽車製乗用車のイタリア市場導入経験があるマルティン・モータース社が、イタリアの法廷でスマート・フォーツーとの差異性を強調。大方の関係者の予想に反して、それが認められたためである。

具体的には---
●スマートがリアエンジン・リアドライブであるのに対して、バブルはフロントエンジン・フロントドライブである
●乗車定員が4人である
●ボディパネルがスマートが樹脂製なのに対してスチール製である
●変速機が手動である
---ことなどだ。

さらに、小貴族の標準エンジンであるスズキ製ベースの1100ccユニットを、イタリアで各種優遇措置が受けられるLPG燃料も使えるよう改造。またリアにスペアタイアを背負わせるという、いわば「だめ押し」的モディファイまで行なって、スマートとの違いを訴えた。

マルティン・モータースのマルコ・アルビエリ氏によれば、2011年1月に地元イタリアで販売開始し、当初の販売目標は年間3500台という。また将来は南部シチリア島に工場を建設し、バブルをイタリアで生産することも視野に入れているとのことだ。

ちなみにボローニャモーターショー会場のバブルのスタンドでは、意外にも「冷やかし」というより、LPG併用エンジンの性能などについて真剣に質問している来場者のほうが目立った。

たしかに昨今イタリアでは、GM大宇製のシティカー、シボレー『マティス』のLPG仕様が販売好調であることからして、バブルが市場に受容される可能性が皆無とは言い切れないだろう。

しかしながら、乗り込むときに握るドアノブの形状から、運転席に座ったとき広がる光景まで、やはり個人的には初代スマート『フォーツー』を思い浮かべてしまう。欧州のスマート・ファンのイベント会場に、さりげなく乗りつけたら意外にウケるか、それとも故・尾崎豊のファン集会で物真似をしてボコボコにされたタレント・松村邦洋の二の舞になるか、興味深いところである。


筆者:大矢アキオ(Akio Lorenzo OYA)---コラムニスト。国立音楽大学卒。二玄社『SUPER CG』記者を経て、96年からシエナ在住。イタリアに対するユニークな視点と親しみやすい筆致に、老若男女犬猫問わずファンがいる。NHK『ラジオ深夜便』のレポーターをはじめ、ラジオ・テレビでも活躍中。主な著書に『カンティーナを巡る冒険旅行』、『幸せのイタリア料理!』(以上光人社)、『Hotするイタリア』(二玄社)、訳書に『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)がある。

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